約 3,642,832 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2794.html
注意書き タイトルこそとある落語ですがその落語との関連はありません。 虐待無し。人間虐め。 作者当てシリーズってやつです、見事正解した名前あり作者さんの中から抽選で一人、このSSの作者とネチョるSSを書いてくれるという話はありません、あしからず。 やあ!僕は虐待おにいさん!使い古された感があるこの挨拶だけど、たまにはいいよね!! そんな自分の元に一人の青年が訪れる、彼とは昔から付き合いがあり、自分もゆっくりを虐待したいと言ってきたので簡単な虐待道具を見繕った事がある。 そんな彼がゆっくりのことで話があると言ってきたのだ、そしてゆっくりは見せないでくれとも言ってきた。 「やめでぇ!!おにいざん!!でいぶばなびもじでないよぼぉぉ!!がえじで!!おうじがえじでぇぇ!!」 「うっさい」 さっきまで潰れると潰れないのぎりぎりの力でトンカチで殴っていたれいむを透明な箱に入れて蹴り飛ばす。 「もうおぞらどびだぐないいいぃぃぃ!!」 そんなことを言いながられいむは隣の部屋へと吸い込まれていった。 「やあ!よく来たね!!ゆっくりしていってね!!」 そんな挨拶をしながら青年を迎え入れる、彼はもともと健康的な顔色をしているというわけではなかったのだが、今日は一層顔色が悪くなっているような気がした。 「すいません…それ、やめてくれませんか?」 「ん?どうした?あんなにゆっくりをいたぶるのが好きだって言ってたのに…」 「そのことを含めて相談に来たんです、とりあえずゆっくりは全部閉まってくれましたか?」 「ああ、さっき全部奥の部屋にしまったよ、とりあえずあがりたまえ、お茶と饅じ…煎餅でも出そう」 青年を居間に通す、ソファに座らせそこで待ってるように言った後、お茶を入れて持ってきた 「それで、何の相談だ?好きな人ができたとか言われても彼女いない歴=年齢な俺には恋愛相談には乗れんぞ?」 「そんなんだったらあなたには聞きません、実はこれを返しに来たんです」 そう言って彼が取りだしたのは自分が少し前に彼に上げた、透明な箱をはじめとするゆっくり虐待道具だった。 「おいおい、それは俺が君にあげたんだ、返してもらわなくても…」 「俺、ゆっくり虐待を止めようと思うんです」 「…なに?」 なんだって?ホワイ?なんで?どして? 「とりあえず、理由を聞かせてもらおうか?」 「はい、じゃあ…」 青年は一口、お茶を飲んでから話し始めた。 「あなたに教えてもらってから、ゆっくりを虐待したとき、俺はとても楽しかった、いろいろな鬱憤をゆっくり相手に発散できた、虐待という麻薬にトリップしていたといってもいいでしょう」 「その例えは俺達がみな麻薬常習犯みたいに聞こえるからやめてくれないか」 いきなり何を言っているんだ、こいつは? 「僕はゆっくりを捕まえて、いろいろな虐待をしてきました。殴る蹴る、箱に閉じ込める、足を焼くなどです」 まあ、当然だろう。その三つは虐待の初歩の初歩といってもいい、虐待が趣味の人間でこの三つをしたことがないというやつはほとんどいない。 「ただ、つい最近、あることに気付いたんです。自分はゆっくりの親子を使った虐待、親の前で子を殺すという虐待をしていなかったんです」 「うん、それで?」 「内容としては簡単なものでした、親の足を焼いてその目の前で子を一匹ずつ殺して行くというものでした、親は泣き叫ぶし、子は僕が口添えしたので親が自分たちを見捨てたと思って親を罵る、 必死な親と俺に殺されようとしているのに親を罵ることしか考えない子ゆっくりがとても滑稽なものに見えて何とも言えない気分になりました」 「無力な饅頭風情の生死を自分が握っている、その間隔がとても心地よいものだったろう?他の生物では味わえない、ゆっくり虐待ならではの特権だな」 「まあ、そうなんでしょうかね」 無力なのに自分たちの生存権と所有権をひたすら主張するだけの汚いまんじゅう、そんな生物に自分たちの無力さを思い知らせ、親子間に誤解を生ませてそのまま一家まとめて皆殺し… ああ、なんていいんだろう。と、俺がトリップしかけたところで青年が話を続けた。 「その虐待がしばらく僕のマイブームになっていました、ただ、先日あるれいむ一家を虐待しようとして…怖くなったんです」 「怖いって、何が?」 れいむ種?まりさ種ならドスになりかけのやつでいきなりスパーク撃たれて髪が焦げたという話は聞いたことがあるが…そんなことを考えていると青年は少しづつ話し始めた。 「さあ!!今日も張り切って虐待するぞ!!」 そんなことを言いながら外に出た僕は虐待お兄さん。 実際はそこまで虐待回数も多くはないからお兄さん見習いってところかな? 今僕がはまっているのはゆっくりの親子を使った虐待だ、まさに人生の春を謳歌しているというゆっくり一家を捕まえ家に持って帰ってから、親の足を焼く。 たいていゆっくりどもは「ばりざだじだにもばるいごとしでなびのびどぼじでぇぇぇえ!?!?」とか言ってくるけどお前みたいなのが道端を歩いているから悪いんだ。 学校でも会社でも虐められる立場だった俺でも今は何とか生活している、そんな俺にすぐ捕まってしまうような饅頭の癖に家庭持ちなんて生意気だし、そんなに非力な存在なら 人間に危害を加える前にさっさと一家心中した方が地球環境のためにもなると思うんだけどね。 「おかーちゃんにひどいことしりゃいでぇ!!」 「おかーちゃんをはにゃちぇ!!」 当然親の悲鳴を聞いた子ゆっくり達は抗議の声を上げてくるがそんなものは無視、弱者の懇願をはなから無視するのってある種の快感だよね。 「お、おがぁざんのごどはいいがらちびじゃんだげでもにげでえぇ…」 残念、子ゆっくりはジャンプしても越えられないような深さの桶に入れてるから土台無理なのよね。 「ゆっぐりでぎないおじざんはじね!じねぇ!!」 あーはいはい、いつか死にますよ、確実にお前らよりは後だけどな。 とりあえず親の足(?)の部分をなでまわしてこんがり焼けていることを確認する。 「どーだーゆっくり、ちゃんと歩けるか?」 とりあえず確認のために地面に置いて煽る。 「あるけなぐじだのはおばえだろおぉぉ!!じね!あやばれぇぇ!!」 生首が体中を震わせながら目を真っ赤にしながら泣きわめくさまはどう見て持ちも気悪い、気持ち悪いのがさらに俺のテンションを上げてくれる。 さて、喚くだけで動けない親を桶がよく見えるようにおいて、子を殺すことにする。 「おじびじゃん!!にげでえぇぇ!!」 「おかあちゃんどこにいりゅの~!?」 桶の中からは親はよく見えない。だが親の悲鳴から俺をゆっくりできない人間と認識したのか必死に逃げようとする。 まったくもって無様だ、こんな狭い桶の中で逃げ切れるわけないのに。 「はなちぇ!!はなちちぇ!!おかあちゃんたちゅけてぇ!!」 とりあえず最初に一匹掴み、親と子両方からよく見える位置までもって行く。 「れいむのおちびじゃんをはなじぇえええ!!」 「おねーちゃんになりちゅるのー!!」 「いもーちょをはなちぇ!!そしちぇあやまりぇえ!!」 「はい一匹目ドーン!」 「ゆぎゃ…!!」 俺の手の中で一匹目の赤ちゃんがはじけた。一瞬の静寂の後、親と子が同時に叫ぶ。 「でいぶのあがちゃんがあああああああ!!」 「いやじゃああ!!じりたちゅない!じにたちゅにゃいよ!!」 「どおじでごろじだの!でいぶだじばにもじでないのにいぃぃ!?」 「アッハハハハ!!馬鹿見てぇ、お前ら足焼かれて閉じ込められて俺に家族をつかまれてたのにまさか殺されないだろうとは思ってたの?馬鹿見てぇ!!」 そこらへんの虫だって人間に捕まれたら全力で逃げだそうって言うのに? 「ほら、泣きわめくのはそこまでにしとけよ、まだまだ殺して行くんだからそんなにないたら水分持たないぞ?」 ほれ二匹目。 「ゆべしっ…」 「ああああああああ!あがじゃんんん!!」 三匹目。 「おかーちゃんたちゅげ…」 「れーみゅのいもーちょがああぁ!!」 「おかーちゃんたちゅけちぇえ!!」 「ちにちゃくにゃいよぉぉ!!」 「れーむたちにゃにもしてにゃいのにどおちてこんなことするのおぉぉ!?」 「そりゃお前たちゆっくりが生きるにも値しない屑生物だから俺みたいな屑に殺されるぐらいしか存在価値がないんだよ、あとお母さんは助けに来ない、なぜなら君たちのことなんかどうでもいいから」 「うしょだああ!!おみゃえがおきゃあしゃんににゃにかしたんだあ!!」 む、それに気づくとはこいつら、結構利口な方なのか?まあいいや、次からは子と親を隔離してから足を焼こう。 「まあ、そうだね、でそれに気付いてどうなるって言うんだい?あ、そ~れ!!」 「おきゃあ…ゆぎゃあ!!」 眼窩から眼球と餡子が噴き出し絶命っと、次で最後の一匹だ。 「やべろおおぉぉぉ!ぞのごがらでおはなぜぇぇぇ!!」 「いやだ~!おかあしゃんたちゅけて~!!」 だから親は助けにこれないんだって、というかゆっくりに限った話でもなく戦争映画とかでは何で死ぬ前に母親のことを呼ぶんだろうね?戦場に親がきて助けてくれるわけでもないし、 映画は好きだし戦争映画も好きだけど人が死ぬ前にモルヒネを撃たれながら「ママ、ママ…」って呟くやつは大っきらいだ、そんなこと言ってもままはたちゅけてくれまちぇーんとか言いたくなるよね。 少し横にそれた。ごめん。 で、最後の一匹を手にしその手に力を込めたとき… 「やべろ!やべろ!やべろおぉぉ!!!」 べりっ!! あれ?べり…? 音がした方向を振り向いたとき目に映ったのは、焦げた足を突き破り、そこから餡子を漏らしながらも自分に向かって襲いかかってくる親ゆっくりのかをがあった。 ついさっきまで滑稽なものだとしか思っていなかったそれが、その時だけおにや悪魔の類に思えた。 「っ…いってえ!?」 とっさに顔をかばおうとして出した左腕を噛まれる、ゆっくりに噛みつかれたことなんて初めてだったけど、こいつらってこんなに噛む力があるのか!? →手につかんでいた子ゆっくりを一瞬で握りつぶし、まだ左腕に噛みついてる親ゆっくりを左手でぶんなぐる、親ゆっくりは絶命したが、自分の腕にはかなり大きいゆっくりの歯形が残っていた。 そこまで話し終えた後、青年はお茶を一杯飲んだ。 「それで君は、ゆっくりという存在が怖くなったと、ゆっくりを見るたびに最後の親れいむの顔を思い出してしまうと」 「はい、その通りです。あの顔を見た後、ゆっくりという生物が怖くなったんです、そして自分は昔いじめられた腹いせにその虐めてきた相手と同じこと、 もっとひどいことをしてたんじゃないだろうかって…だから自分はこれ以上ゆっくりを虐めることができないんです。だからこれを返そうと…」 「まあ、待て」 青年の言葉をさえぎり、袋から一つの饅頭を取り出す。 「この普通の饅頭を潰してみるんだ」 「え…?でももったいなくないですか?」 「いいから、やれ」 「じゃあ…そぉい!!」 テーブルの上に置いてあった饅頭は一瞬で周りに餡子をまき散らしながら潰れた。 「それで、いまの行為を酷いことだと感じたか?自分をいじめた相手と同じことをこの饅頭にしたと思ったか?」 「え…?いいえ、だってこれはただの饅頭でしょ?」 「そう、これはただの饅頭だ、ゆっくりもただの饅頭なんだ」 それを聞いた瞬間、青年の顔が明るくなる。 「そうか、ただの饅頭は虐待してもいいんだ!!」 「少し違うけどそういうことさ」 そう言って袋からもう一つの饅頭を取り出し、そこに般若の顔をしたゆっくりれいむの顔をペンで書く。 「これを見てみろ、この顔が怖いか?自分の行為が幸せな動物を殺してしまうんだと思うか?」 「いいえ、だってただの饅頭ですもんね!!」 「そう、ただの饅頭だ」 そう言って言葉を続ける。 「ゆっくり虐待はアブノーマルな趣味だ、これを趣味に持つことが公に知られて職を失った人だっているという。確かに生物を虐めるのが大好きだという人間がいれば社会では認知されにくいだろう… だが、ゆっくりは饅頭なんだ、生物じゃない。ただの饅頭親子、団子大家族をたたいたり焼いたり潰したりしても本来は咎められることではないし、気に病むことではないんだ。 まあ、アブノーマルな趣味といってもいろんな人がいる、ゆっくり虐待にも俺以外の考え方を持っている人もい多いだろう、だから俺はこれ以上君には何も言わないよ」 「わかりました、今日はありがとうございます、話を聞いてもらえて少し楽になりました」 「そうか、それでこの透明な箱はどうする?いらないなら私が引き取るが…」 青年が返すといって持ってきた箱を指さすと、青年は笑顔で答えた。 「やっぱり持ち帰ります、僕にはまだこれが必要みたいです」 あとがき 制裁以外の理由で虐待する人間を書こうとするとどうしても人間の屑みたいなやつになります 作者当てシリーズ このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2226.html
「までえ゛え゛え゛え゛え゛!でいぶのあがぢゃんがえぜえ゛え゛え゛え゛」 鬼のような形相で跳ねるれいむ。れいむが追っているのは、目の前を走るピンク色をした四角い箱だ。 四つのタイヤが付いているそれは、作りは外の世界の乗り物の自動車に似ている。 ただしゆっくり達の利用するそれは"スィー"と呼ばれる物である。 重心をコントロールして上手くスィーを操りながら、人が走る程度の速さで移動するまりさ。そしてよく見ると、まりさの口の中でモゴモゴと何かが動いているのがわかる。いや、それは動いているどころか必死に助けを求めていた。 「おぎゃーしゃんだづげでえ゛え゛え゛え゛!!!」 「でいぶお゛う゛ぢがえ゛る゛る゛る゛る゛!!!」 口の中にいるにも関わらず、聞こえるのは相当大きな声を出しているのだろう。しかしその声も無駄に終わろうとしていた。 これが起伏の激しい森の中ならばまだ追いつけたかも知れない。しかしここは平地であった。 普通のゆっくりでは追いつくことは不可能であった。 れいむは死ぬ思いで走った。しかし体の限界は当に来ていた。地面に落ちている石に躓く有様だった。 「ゆべえ!」 地面に思いっきり躓くれいむ。それと同時に今まで耐えてきた疲れと痛みが襲ってくる。最早立って追いかけるのは不可能であった。 「おね゛がい゛でずがら゛あがぢゃん゛がえ゛じでえ゛え゛!!!」 「おぎぁぁぁぁあしゃぁぁぁん!!!!!」 「れーみゅぼう゛い゛や゛や゛や゛!!!」 もう出来ることと言えば、親子で呼び合うことぐらいであった。それすらも暗闇に消えていくまりさのせいで叶わなくなった。 「あ゛がじゃん・・・ひぃ・・あぎゃじゃん・・・」 自分の子供を救えなかった悔しさから、涙を流しながらそこに倒れるれいむ。涙で自らの皮膚がふやけようとも泣き続けていた。 月夜に照らされた飼いゆっくりの証であるバッジが悲しげに輝いていた。 昼間、ぱちゅりーとありすの親子は子供たちとゆっくりしていた。 子供たちは目の前で蝶に夢中になっていた。実にゆっくりとした子供たちである。 それは一瞬だった。 赤ちゃんありすとぱちゅりーが蝶を追って、傍の大樹に近づいた瞬間、そこに潜んでいたれいむのにバクリと食べられた。 それと同時にぱちゅりーとありすは枝で背中を刺された。誰が刺したかはわからない。ただの傷のせいで思うように動けない。 そして背中に気が移っていたのに気がついた時、すでに周りに誰もいなかった 優しい春の風が吹いているだけだった。 赤ちゃんゆうかは親から与えられた土地で畑作りに勤しんでいた。土を耕し、種を植え水をまく。それらをテキパキとこなしていた すると、どこからか「そろーり、そろーり」という声。 振り向くとそこには一匹のれいむが居た。 「・・・なにしにきたの?はたけをあらすならゆっくりしね!」 敵意をむき出しのゆうかに対して、れいむはのほほんとした顔で答えた。 「ゆっくりしていってね!!!。ゆうかのおはなさんがきれいだからみにきたんだよ。じゃまだったらごめんね!」 れいむの無邪気な笑顔。それを見たゆうかは、れいむを自分の横へ誘う。 「・・・ゆっくりみていっていいわよ。」 「ゆゆ!ゆうかありがと!ゆっくりみていくよ!」 嬉しそうに花を見ているれいむ。それを見てゆうかは嬉しい気持ちに包まれた。 「すきだらけなんだよねーわかるよー」 そこでゆうかの視界は真っ暗になった。結局最後まで後ろにいたみょんには気づかなかったのだ。 ふらんは産まれてまだ1週間しかたっていない。故にまだ外へ出してもらった事が一度もなかった。 姉であるれみりゃと毎日巣で遊んでいた。母親と父親はゆっくりとした親だったし、 おもちゃのあまあま達もいっぱいあった。しかし、幼い好奇心は抑えられなかった。 「うー。そとにでたいー。」 「うー♪おそとはきけんなんだどぉ~♪れみぃたちはこうまかんのおぜうさまだから、おうちにいるのがいいんだどぉ~♪」 不機嫌そうなふらんと明るいれみりゃ。いつものように専用の部屋で遊んでいた。周りはおもちゃと枯れ草で出来たベットである。 母親と父親は『だんすぱーてー』なるものに出かけていた。家で大人しくしているように大量のあまあまを置いて行ってくれた。 部屋の中でれみりゃを虐めて遊ぶふらん。 すると入口から誰かが入ってきた。 「ゆっくりするんだどぉ~」 れみりゃであった。大きさ的に大人のれみりゃであるが、勿論ふらん達の親ではない。 初めて見た家族以外の同種にふらんは警戒心を抱いたが 「ゆっくりしていくんだどぉ~♪」 姉のれみりゃは逆に興奮しているようだ。 れみりゃは姉妹に笑顔で挨拶をした後、プリプリとおしりを振りながら 「れみぃはいまがらこうまがんで、さくやと『ぷでぃん』をたべるんだどぉ~♪いっしょにたべる~?」 予想外の事を言ってきた。 「ぷでぃんたべるどぉ~♪ふらんもいくどぉ~♪」 あれだけ外は危険と言っておきながら、さっさと外に出てしまうれみりゃ。それほどまでにぷでぃんとさくやの二つは強力なのだ 一方ふらんも、これはチャンスだった。念願の外に出れるチャンス。 その前に先ほどの警戒心は消え去っていた。 「うー!おそとでるー!おねーさまはやくこいー!」 「ゆっくりしないでいくどぉ~♪えれがんとなおぜうさまは、じかんをまもるんだぉ~」 そう言いながられみりゃは、二人の姉妹と手を繋いで空を飛んだ。そうして巣を飛び去っていく。 ここはとあるドスまりさの群れ。崖の下にあり、穴に掘られたいくつかの巣と、崖にドスパークで掘られたドスの穴がある巣だった。 ドスの居る群れとしてはごく普通である。巣のゆっくり達は巣の外で楽しそうに遊んでいた。 その群れにどこからか大量のゆっくり達がやってきた。まりさやれいむ、みょんやぱちゅりー、果てはれみりゃやふらんまで 皆が赤ちゃんゆっくりを持ちながら、ドスの居る穴へ入っていた。 人間が楽に入れるほど広い洞窟の奥、そこにはドスと様々な赤ちゃんゆっくり達が居た。ドスはどうやらご飯を与えているらしく、 帽子から大量の食糧を取り出していた。 「ゆゆ~いっぱいたべるんだよまりさのあかちゃんたち~♪」 そういってご飯を一匹一匹に与えるドス。 「みょんはまだちっちゃいからね~♪まりさがたべやすくするよ~」 そういって生後間もないゆっくり達には、自分の口で一度モグモグと噛み砕き、食べやすくペースト状にしていた。 「あかちゃんはゆっくりたべていいんだよ~しあわせー?」 赤ちゃんゆっくりの食べている様子を嬉しそうに見ながら語りかけるドス。対して子供たちの方はと言うと 「む・・・ちゃ、むーちゃ、・・・ちあわせー」 「うまいんだどぉ・・・」 と、どうみても幸せそうではない赤ちゃんゆっくり達と、 「うめっ!うめぇ!これめっちゃうめぇ!」 「ドスのごはんはおいしんだよねーわかるよー」 と幸せそうに食べる子供ゆっくりに別れていた。 「ゆゆ~♪おかーさんはしあわせだよー♪」 嬉しそうにポヨンポヨンと飛び跳ねるドス。飛び跳ねるたびに揺れで子供たちは数ミリほど浮かぶほどだ。 そこへ、先ほどのゆっくりたちがやってきた。そして開閉一番に 「あかちゃんをつれてきたよ!はやくこどもたちにあわせてね!」 まりさが口に含んでいた赤ちゃんゆっくりをベッと吐きながら言った。その衝撃で口の中の赤ん坊は勢いよくドスのところへ飛んだ。 「ゆべぇ!」 「ゆびぃ!・・・いちゃいよ!まりちゃになにちゅるの!」 プンプンと怒りながら自分をさらったまりさに文句を言う赤ちゃんまりさ。 それに対して、まりさが何か言う前に、まりさの前に大きな壁が現れた。 「あかちゃんになにしてるのォ!あかちゃんはゆっくりさせるんだよ!!!」 そういってまりさを付き飛ばすドス。手は抜いてあるとはいえ、2mのドスの突撃は、バレーボール程度のまりさにはかなりの衝撃だった。 壁にドンッっと叩け付けられ餡子を吐くまりさ。それを蜂蜜を食べながら見ていたまりさの子供のぱちゅりーはプンプンと怒りながら 「むきゅん!あかちゃんにひどいことするおとーしゃんは、ゆっくりできてないわね!」 そう言いってドスの方へ行き、すりすりしようとするぱちゅりー。ドスもそれに気付いたのかすりすりし始めた。 しかし如何せん大きさが違いすぎる。ドスにとってはただのすりすりでも、ぱちゅりーには皮を削られそうな行為だった。 「すーりすーり♪」 「む・・・むぎゅ!むぎゅうぅ!」 それでも必死で耐えながらすりすりするぱちゅりー。それを見たまりさは泣きだした。 「どずどずりずりじじゃだべえ゛でじょう゛う゛う゛!!!ぱぢゅり゛ぃじんぢゃう゛う゛!!!」 親に必死の説得も、ぱちゅりーを苛つかせるだけだった。 「む!ドスはぱちゅりーたちにおいしいごはんをくれるのよ!おとーさんははちみつなんてとれないでしょ! それにドスはくまもおいかえせるのよ!たかーいたかーいもしてくれるし。ドスがぱちゅりーのおかーさんだったらよかったのに。」 この発言は流石に我慢の限界だった。わが子の一言はドスの手で死んだ愛する妻のぱちゅりーを全否定するものだったのだから。 「おがぁざん゛のごどわ゛る゛ぐい゛う゛な゛ん゛でざい゛でい゛だよぉお゛お゛お゛!!!!」 怒りの声をひたすらぱちゅりーに向けるまりさ。するとドスが 「ぱちゅりー。もとのおかーさんにそんなひどいこといっちゃだめだよ!ドスおこるよ!」 「む・・・ごめんなさいドス・・・・」 「わかったらおとーさんともスリスリしてあげてね。」 「・・・わかったわドス。おとーさんスリスリしてあげるわ。」 ずいぶん調子の良いこと言うものである。そもそもこうなったのはドスが原因だと言うのに。 ドスは昔から孤独だった。家族は生れて間もないころにれみりゃに襲われた。 そのあとは母親の妹の家で暮らしたが、ひとりで狩りに出かけられるようになった頃に、家族は人間に捕えられた。 食糧難で仕方なく畑を荒らしたせいらしい。 それからはつがいや親友や群れのみんな、その全てがドスを置いて死んでいった。 ドスはずっと孤独だった。ドスになった後もそれは続いた。 自分が育てた群は、ゆっくり達の無知で崩壊し、ある時は狩りに出かけた隙にゆゆこに襲われた そうしてずっとずっと孤独だったドス。しかしそんなドスだからの夢があった。 『自分の子供が欲しい』 ドスとなってしまった今では子を持つことはできない。ドスになってしまっては、子種となる特殊な餡子が無くなってしまうのだ。 しかしドスとなって群れを持ち、ゆっくりとした親子を眺めているうちに、その欲求は膨らんでいった。 あんな風に子供をあやしたい、子供とすりすりしたい、泥だらけの子供をペロペロと舐めて綺麗にしたい、子供たちとご飯を食べたい、子供と一緒にお歌を歌いたい、水で遊ばせたい、いっしょに寝たい、一緒に居たい、一緒に居たい 叶えられない夢は徐々に徐々に膨らみ、遂に弾けた。 手始めに、ドスは近くのゆっくりの一家を襲った。それには捕食種も含まれていた。例えふらんと言えどドスには敵わない。 そうして産まれたばかりの子供たちを奪い、親を適当に痛めつけた後こう言った。 「あかちゃんがぶじでいてほしいなら、ほかのあかちゃんをとってきてね!」 無論、ドスには赤ちゃんを傷つけるつもりなど欠片もない。こう言えば親が命令通りに動くのがわかっているのだ。 普通に育てたいなら奪った赤ちゃんで十分だろう。しかしそこに、ドス本来の性格が混じってしまったのだ。 『みんなをゆっくりさせたい』ゆっくり達のリーダーに相応しきその目標が、『たくさんの赤ちゃんをゆっくりさせたい』 に変ってしまったのだ。 それで始まったのがこの誘拐である。赤ちゃんゆっくりを誘拐させ、自分の子として愛情を込めて育てる。 連れてこられた赤ちゃんは最初はもちろん抵抗する。しかし哀しきゆっくりの性か。ドスの元で暮らすのはとてもゆっくりできると分かると 段々とドスに懐くのだ。そうして生まれた群がこの群れである。ドスの子供たちが暮らす群れ。ドスの夢の完成系であった。 ドスはぱちゅりーが父親の所に向かうのを見ると、親たちが連れてきた赤ちゃんたちの目の前にやってきた。 「ゆっくりしていってね!!!」 巣全てに響き渡る大声。子供たちも反射的に挨拶を返してしまう。 「ゆっきゅりちていっちぇね!!!」 しかし、すぐに自分たちが連れてこられたのを思い出すと、皆が騒ぎ始めた。 「おうちかるみょんんんん!!!!」 「ゆっくちできにゃい!!!!!」 「おかーしゃーん!ゆえーん!ゆえーん!」 「れーみゅのみゃみゃどこぉぉおお!!!」 「まりちゃたちをちゃっちゃっとおうちにかえちてね!!!」 特に、先ほどの親まりさに連れてこられた赤ちゃんれいむとまりさは、ドスに向かって体当たりをしていた。 しかしドスにはスキンシップをしているようにしか見えなかった。 「ゆ~♪ゆっくりしたおちびちゃんだね!ぼうしとりぼんについてるバッジもすてきだね!ゆっくりすりすりするよ!」 そういってすりすりをし始めるドス。しかし赤ちゃ達ににしてみれば、それは壁に擦りつけられているようなものだ。 「いぎゃい!なにぢゅるの゛の゛の゛の゛!!!れーみゅいじゃいぃいいい!!!」 「やばでえ゛え゛え゛!!!」 ズリズリと皮を引っ張られる痛みで泣きだす二匹。それを見たドスは、「ゆゆ!まだおちびちゃんにははやすぎたね!ごめんね!」 などと言いながら、二匹から離れる。 「いまからみんなのごはんをとってくるからね!おいしいごはんでゆっくりしようね!」 そういってご飯を取りにいくドス。 それと同時に連れてこられたふらん姉妹が動きだした。 「うー!あまあまたべるどぉー!それでおそといくー!」 「すぺしゃるなでぃなーだどぉ~♪さくやはどこだどぉ~♪」 そう言いながらゆっくり達を食べようと持ち上げた矢先、何かで頭を殴られた。 「う!!!」 「いじゃい!なにずるどぉ~!れみりゃはごうまかんのおじょーざまなんだどぉ~」 泣き目で抗議する二匹。後ろにいたドスの舌で殴られたようだ。 「しまいをたべちゃだめなんだよ!わるいこにはおしおきするよ!」 そういって何度も何度も舌で叩くドス。ドスにしていみれば躾のつもりなのだろう。 しかし二人にしてみれば虐待のようなものだった。 「ぎぼじわるいいいい!!!ごばんなざい!!!!れみぃもういやぁああああ!!!」 「うううう!!!!ふらんいやー!もういやー!」 「わかったらないいんだよ!みんなと、あまあまなはちみつをたべようね!」 ニッコリとドスは笑うと、食糧庫へ戻っていった。 子供たちが連れてこられてから三日がたった。半月が真上に来た頃、群れに二匹のゆっくりがやってきた。 れみりゃとふらんである。三日前に連れてこられた姉妹の親である。 「ゆゆ!れみりゃたちがきたよー!!!ゆっくりしないでドスのところににげるよー!」 蜘蛛の子を散らすように逃げるゆっくりたち。どこから手に入れたのかスィーでドスの穴のなかへ逃げていった。 「あがぢゃんがえずどぉー!!!れみりゃをさらっだあまあまはごろずんだどぉー!」 相当お怒りなれみりゃ達は、ドスの穴へ向かっていく。ゆっくりの巣を破壊しながら歩くそれは、さながら外の世界の娯楽であるという『怪獣映画』のそれである。 穴の手前まできた二匹。すると、穴の奥の暗闇から光が現れたのに気づいた。 いや、正確には気づいた時にはその光に貫かれていた。 「いぎゃいいいい!!!!れみりゃのあじがぁああああ!!!!」 「うぅうううう!!!!ふらんいじゃいのい゛や゛!」 洞窟の奥から放たれたのはドスパーク。それを放ったのはもちろんドスまりさだった。 二匹の前に現れたドスは、一瞥すると 「ドスのこどもたちをうばうなんてさいていだね!まりさはこどもたちをゆっくりさせたいんだよ!ゆっくりできないれみりゃたちはゆっくりしね!」 これほどふざけた話もそうはない。ドスの身勝手極まりない言葉を聞いたれみりゃは残った力でドスに噛みつこうとした。 「あまあまはじねぇええ!!!!」 ゆっくりにとっては鋭い牙がドスめがけて飛んでくる。ドスはそれをひょいっと体を半分ずらすだけで交わした。 そして勢いあまって倒れたれみりゃの後頭部目がけて飛び跳ねる 「みんなのでぃなーにするよ!ゆっくりくわれてね!!!」 ぶちゃ、と嫌な音と共にれみりゃは唯の肉まんになり下がった。その光景をみたふらんには最早戦意はなかった。 しかしそれで見逃す事はドスはしない。 数分後 「おちびちゃんたち~♪ゆうごはんだよー!!!ゆっくりたべていってね!!!」 「おかーさんかたべさせるからね。あーんしてね!」 「ちーちーするの?おかーさんがてつだってあげるね!・・・そうだ!おおきいこどもたちは、あしたかりにいこうね!おてほんをみせるよ!」 穴の奥からは嬉しそうなドスの声が聞こえた。実に楽しそうな声だ。他人から奪った幸せを謳歌しているのだから、当然とも言えるのだが。 【あとがき】 一話完結です・・・・嘘です ここで終ったらストレスがマッハすぎる。 もしかしたら俺はドスが好きなのかもしれない。 解決編 過去作 悲しき聖帝ゆっくり! お前は愛につかれている!!1 悲しき聖帝ゆっくり! お前は愛につかれている!!2 悲しき聖帝ゆっくり! お前は愛につかれている!!3 お兄さんとドスれいむ 鬼意屋敷殺人事件 どすの加工所 幻想樹の迷宮 幻想樹の迷宮Ⅱ 徹夜でゆっくりしようぜ! 徹夜でゆっくりしようぜ!2 地震 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/716.html
ゆっくりいぢり ゆっくりをからかう ゆっくりれいむがいたので、最近思いついたいたずらをしてみようと思う。 「ゆっくりしていってね!!!」 「ゆゆ!? おにーさんゆっくりできるひとなの!? ゆっくりしていってね!!!」 実にゆっくりらしい反応だ。こうでないと今回のいたずらは面白くない。 手に取りたるはタイヤキ、中身はクリームではなく餡子だ。 「ところでれいむ、コレがなんだか知ってるか?」 と、タイヤキを持ってれいむに見せてやる。 「しってるよ!!! とってもあまくてゆっくりできるものだよ!!!」 「じゃあ、コレの中身が何なのかも知ってるな?」 「しってるよ!!! あんこだよ!!!」 「ということはお前の仲間だな? お前は仲間も食べるのか?」 「こんなのれいむのなかまじゃないよ!!!」 「お前の中身は餡子だろう? 仲間じゃないか」 「ゆゆっ!!! じゃあ、タイヤキってれいむのなかまなの!?」 「ああそうだ。お前は仲間を食べてたんだよ。 タイヤキはしゃべれないから痛くてもやめてって言えなかったんだな。 しゃべれないのをいいことにいじめるなんて……おお、こわいこわい」 「ゆゆゆ……だいやぎざん、ごべんな゛ざい゛…… ゆっぐ……ゆっぐ……うわーん!!!」 さて、本格的に泣いたところでネタ晴らしだ。 「うっそぴょーん!!! タイヤキはタイヤキ職人さんが作るお菓子なの!!! はじめっから生き物じゃないんだよ!!!」 「ゆゆ!? おにーさん、れいむのことだましたね!!! ぷんぷん!!!」 「ほら、コレをやるから機嫌直せよ」 といってさっきまで持ってたタイヤキをれいむの目の前においてやる。 「ゆ!! いただきまーす!!! むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!!!」 「ハハハ……こんなんで幸せって、ずいぶん安いもんなんだな」 「ゆゆ!!! れいむやすくないよ!!! ゆるしてほしかったらもっとたいやきちょうだいね!!!」 結局、俺はこの日れいむにタイヤキを5個も食べさせる羽目になったのであった。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2962.html
※登場する人間達に名前があります。嫌な人は注意。 ※あまりいじめてません。 ※世界観・設定の描写がだるいので斜め読み推奨です。 要するに近代の田舎にゆっくりがいる設定です。 ゆっくりと小学校(前) U市郊外に位置するこの町は多くの山と川に囲まれ、自然を色濃く残している。 都市に近く、閑静な住宅街と綺麗な空気に恵まれた土地は人間にとっても、 数年前から現れだした生物風にいえば「ゆっくりできる」場所であった。 だが、町の開発が進んだ為か、環境問題の影響か 近頃では麓でも大型の鳥獣を見かけることは無くなった。 代わりに山に棲み付いたのが、「ゆっくり」と呼ばれる生物(ナマモノ)である。 「ゆ?」 「ゆっくりしていってね!」 何の前触れも無く全国に現れたこの「ゆっくり」の生態は不可解極まる。 「ゆっくりしていってね!」に代表されるように、ある程度の人語を操る。 出来の悪い生首のような体を持ち、不思議な力で跳ねて移動するが運動能力は低い。 そして、驚くべきことにその体は饅頭で出来ている。 「ゆっくり」が現れて以来、様々な議論が飛び交ってはいるが 殆ど皮と餡子で構成された生物がどうして生きているのか、 そもそもナマモノではなくイキモノとして扱うべきかという問題すら解決していない。 「「ゆっくちしていってね!!!」」 が、普通のの人にとってはそんな難しい話はどうでもよかった。 最初こそ大騒ぎになったがゆっくりが珍しい存在ではないと分かり、 それぞれがそれぞれの付き合い方を見つけていった。 畑を荒らされ踏み潰す者、一緒に遊んだりゆっくりする者、 食料として扱う者、ペットとして飼う者、人には言えない趣味に使う者、 ゆっくりと関わる人向けのビジネスに携わる者など、多種多様である。 「うん、ゆっくりしていってね。やっぱりかわいいなぁ。でもそこにいると・・・」 「えっへん! おねえさんはゆっくりできるひとd ゆっくりは主に自然が豊かな土地に棲む。 都市部はゆっくりにとってあまりにもゆっくりできない場所であった。 ゆっくり出来ない人や鉄の獣が飛び交い、潰されずにいるだけでも精一杯。 おいしい食べ物、きれいな水、ゆっくりできるおうち、どれも手に入らない。 全てが手にはいるゆっくりぷれいすを見つけたゆっくりは燃えるゴミと成り果てた。 自然豊かな土地に棲むというより都市で生き残れなかっただけかもしれない。 「ゆびゅっ!?」 そこに何も無かったかのように少女の目の前を車が通り過ぎて行った。 親れいむがいた所に残されているのは、親ゆっくり1匹分の餡子と皮。 ゆっくりが現れてからは珍しくない光景だ。 後に残されたのは子ゆっくり2匹と、登校中の少女が一人。 ソフトボール大の子れいむと子まりさは目の前の状況に頭が追いついていないようだ。 「「・・・ゆ?」」 「・・・」 いくら郊外とはいえ、道路の上に饅頭がおいてあればこうなる。 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! おかあさんがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」 「ゆうううう!!? どお゛ぢでえええええええええ゛え゛え゛え゛!!!!?」 「・・・・・・ごめんね、気づいてあげられなくて」 「ゆっぐ、ゆっぐ」 「ゆうぅうぅ・・・」 落ち着いたようなので、話を聞いてみることにした。 「どうして道路でゆっくりしてたの? 危ないよ?」 「どうろなんてしらないんだぜ! ・・・ゆっくりおやについてきただけなんだぜ・・・」 どうやらこの家族は車道についての知識がなかったらしい。 詳しく聞けば、以前は親まりさとたくさんの姉妹がいたが、 今日までに親れいむ1匹に子ゆっくり2匹の3人家族までに減ってしまったらしい。 あ、もう2匹か。 山でゆっくりできなかった家族が、ゆっくりを求めて降りてきたといった所か。 ゆっくりという生物は人間は元より、同サイズの野生動物と比べても脆弱であり、 子ゆっくり2匹がこの先生きのこるのは絶望的といえた。 「まりさ・・・。これからどうしよう?」 「ゆ・・・。ごはんのとりかたもわからないんだぜ・・・」 状況を察した少女が声を掛ける。彼女には当てがあった。 「ねね」 「「ゆ?」」 「良かったら私たちの学校に住まない? クラスで2匹、ゆっくりを飼う予定なの 君たちが来てくれれば、ちょうどいいんだけどな~」 「かうってなんなのぜ?」 「ゆっくりできる?」 少女が通う学校では命の尊さを学ぶため、学級毎に動物を飼うことが推奨されている。 彼女の学級では担任の愛子先生の強い希望で、近々ゆっくりを飼う事になっていた。 「うーん、毎日いっぱいご飯もらえて、みんなにかわいがってもらえると思うよー」 「「ゆゆ!!」」 途端に目を輝かせる子ゆっくり達。 明日からどうやってエサを確保すればいいのかも分からないゆっくりにとって、 これ以上ないほどゆっくり出来る条件に思えた。となれば乗らない手は無い。 「「ゆっくりつれていってね!!」」 「うん、任せて」 この子たちだけはゆっくりさせてあげよう。 そう思って少女は子ゆっくり達を力いっぱい抱きかかえた。 あの車のような理不尽な暴力から守ってあげる、と言わんばかりにきつく・・・。 「・・・!」 「・・・!」 「・・・・・・!!」 「・・・・・・!!」 「愛子先生なんていうかな~?」 「愛で子先生っ!おはようございますー!」 「おはよう。早いわね梨香さん。でも、メデコじゃなくてアイコ先生って呼びなさい」 「えー、でもその方が愛で派っぽくて先生らしいですよ~」 「・・・・・・出目金みたいでかわいくないじゃない(ボソ)」 「? なにかいいました?」 「なんでもないわ。ところで、さっきから抱えてるのって・・・」 「あ、はい! 実は・・・ってわあ!青くなってる!?」 慌ててホールドを解く少女。 「お゛ね゛え゛ざん゛の゛ゆ゛っぐり゛ごろじい゛い゛い゛ぃぃぃ!!!!」 「どぼじでごんなごどじだの゛お゛お゛お゛お゛!!?」 「ゆ゛っぐり゛あ゛や゛ま゛っでね゛ええ゛え゛え゛え゛!!!?」 「ご、ごめん、ごめんね? わざとじゃないの、ごめんなさいっ」 理不尽な暴力から開放されたゆっくりは梨香に罵詈雑言を浴びせ 少女・・・梨香はひたすら謝った。 「なるほど、それで拾ってきたのね」 「はい、ちょうど2匹ですし、他に家族もいないみたいで・・・」 「分かった。そういう事情なら野良ゆっくりを捕まえるより良いわよね」 「ありがとうございます!」 「じゃ、予定通りとりあえずはウサギ小屋に連れて行きましょう」 「あれ? 教室には連れて行かないんですか?」 「教室でおうち宣言されると困るからね。ウサギ小屋じゃ満足出来なくなるわ」 「なるほど。さすが元ブリーダーですね!」 これからのゆっくりライフに思いを馳せる2匹は、 頭上の会話などこれっぽっちも耳に入っていなかった。 「はい、ここが今日からあなたたちのおうちでーす」 「ゆー! ひろいね! ゆっくりできそう!」 「ゆゆ! わらさんがいっぱいあるよ!」 「まだ夜は寒いから寝るときはそれを使ってね。水のみ場はこっち」 「「ゆっくりりかいしたよ!!」」 「気に入ってくれたみたいね」 「ええ、よかったです」 「ゆっ? ごはんがないよ? ごはんがないとゆっくりできないよ!」 「おねえさん! まりさたちにごはんをもってくるんだぜ!!」 「後で係りになった子が持ってきてくれるから、その時にね」 「「ゆぐぐ・・・ゆっくりりかいしたよ!」」 「じゃあ、それまで3人で仲良くね!」 そう言って教師と生徒は去って行った。 「ゆゆ? さん? れいむたちはふたりだよ? おねえさんばかなの?」 「れいむ! おねえさんはいのちのおんじんなんだぜ! ばかなんていうなだぜ!」 「ゆゆっ! れいむがわるかったよ!」 「わかればいいんだぜ! れいむはゆっくりした子なんだぜ! すーりすーり♪」 「ゆゆー♪ おかあさんのぶんまでゆっくりしようねぇ! すりすりー♪」 すりすりする2匹の背後で、藁の山が、音を立てた。 「・・・そういうわけで、今日予定していたゆっくり取りは中止して、・・・」 子ゆっくりが最初に会った人間が梨香だったことは、幸運だった。 この町に限らず、山間の町村では愛で派の人間は少ない。 特に農家の人間には嫌われている。 現在でこそそれなりに対策されているが、 かつては田畑や「おうち宣言」の被害が数多くあった。 もしゆっくりが出会ったのがその被害者であったなら、最悪潰されていたかもしれない。 「梨香も物好きね~。わざわざゆっくりを拾ってくるなんて」 「久美ちゃんはゆっくり嫌いだっけ?」 「別に嫌いじゃないけど・・・。轢かれたのが猫とかじゃなくて良かったわ」 今月のゆっくり飼育係は、先生の話を聞いていなかった2名に決まった。 がさがさっ 「「ゆ!」」 「・・・」 白い体に赤い目を持った生き物が、こちらを見つめていた。 「ゆゆ? どこから入ってきたの!?」 「ここはれいむとまりさのおうちだよ!!」 「ゆっくりでていってね!」 「でていってね!!」 白い生き物-この小屋の先住民であるウサギは、だまってゆっくりを観察していた。 ひくひくひくひく 「きいてるの!! ゆっく・・・ゆぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛!?」 「どうしたのまりさ! ・・・ゆああああああ゛あ゛あ゛!?」 ウサギの鼻は結構高速で動く。 ゆっくりからしてみれば、とてもゆっくりしていない。 直視に耐えられる光景ではなかった。 ひくひくひくひくひくひく... 「ゆっくりしてね! ゆっくりしていってね!!」 「ゆっくりやめていってね!! もっとゆっくりうごいてね!!」 ヒクヒクヒクヒクヒクヒクヒクヒクヒク... 「「どぼじてゆ゛っぐりじでぐれない゛の゛お゛お゛お゛お゛!?」」 ウサギにゆっくりの言葉が通じるはずもない。 目を逸らせば良さそうなものだが、全く気づいていないようだった。 「ゆっくりー、どうしたの?」 「ゆっくりしてないなー」 心配そうにウサギ小屋を覗き込む少女と、どうでもいいと言わんばかりの態度の少女。 「お゛ね゛え゛ざん゛ん゛ん゛!! どういうごとな゛の゛おおおお!?」 「しろいのがいでゆっくりできないよお゛お゛お゛お゛!!!」 「ここからだして!! おうちかえる!!」 「あれ、言ってなかったっけ。ゆっくりを飼える大きい部屋がここしかないの」 ここから出ても生きていけないことを知っている少女達はゆっくりをなだめる。 「落ち着いて、ウサギさんは怖くないよ」 「ほら、エサ持ってきたよ」 「ゆ! やさいさんだ!!」 嘘泣きをしている子供よりも切り替えが早い。 「すごくゆっくりできるたべものだよー!!」 どうやら野菜の味を知っているらしい。 他の家族が全滅した理由と関係があるのだろうか。 「はい、どうぞ」 金網越しに、小屋の中へ細長く切った野菜を差し入れられる。 「ゆー! ゆっくりたべりゅぶっ!?」 「れいぶう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!?」 野菜の前で待機していたれいむを踏み台に、ウサギが野菜にかじりついた。 「あ、ウサギさんにたべられちゃった」 「どおしでごんなことする゛の゛おおおおお!?」 「いや、もともとウサギのえさだし。喧嘩すんなよ」 「ごめんね、でも大丈夫。いっぱいもってきたから」 「ゆぐぐ・・・。おねえさん! つぎはまりさたちにちょうだいね!!」 「ゆ゛・・・はやくおりてええぇえ゛ぇ!」 「うさぎさんはあっちいってね!!」 「まりさのごはんとらないでね!! とらねいでねえええ!?」 「ゆぎゃ!!」 「いつまでたべてるの゛お゛お゛お゛お゛お゛!!?」 それから、何度えさを差し入れても、全てウサギが食べてしまうのであった。 「えさ、なくなったね」 「うー、こんなはずじゃなかったんだけどな。ごめんね?」 「ゆっぐりでぎな゛い゛い゛い゛い゛い゛!!」 「たべさせてよ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!」 「次から小屋の中で直接あげよっか」 「そうする・・・」 元ブリーダーの先生がいれば、もっとうまく面倒を見ることが出来る。 しかし、これは生徒達が命の尊さを学ぶ為に与えられた機会。 生徒達が試行錯誤し、自ら成長することこそが重要で 結果的に生き物が死んでしまったとしても、有意義な経験になる。 そのため、愛子先生を含めた職員達は、基本的に手を出さないことになっているのだ。 「じゃあ、また放課後に来るね」 「ゆ゛!? おいでがないでね゛え゛え゛え゛え゛!?」 「ほんとにうるさいなー。あんなののどこが好きなの?」 「まだごはんたべでないよお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!?」 「んーとねー・・・」 「「ゆ゛っぐりざせでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!!」」 2匹の叫びを聞くものは同居人のウサギだけだった。 つづく このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1377.html
200X年、幻想郷は餡子の波に包まれ……てはいなかった。 れいむは裂かれ、まりさは叩き潰され、あらゆるゆっくりは絶滅したかに見えた。 ――――だがしかし、ゆっくりは絶滅していなかった! 新世紀救餡主伝説 饅頭の拳 ※以上まであんまり関係無いです。 ゆっくりは労働力として使え得るのか。 多くのお兄さんとおじさんとえーりんが挑戦し、夢破れていったこの命題を解決すべく、 金とヒマを持て余したおじさんこと俺が、尊敬する聖帝様とジャコウ様とスター☆リンを範として 「ゆっくりコルホーズ」を開設したのは確か昨年の春のことだったか。 以来このゆっくりコルホーズ略してゆルホーズでは、数多くの野菜が生産され、 それ以上に無数のゆっくりの屍を積み上げてきたのである。 自由の有難みも知らず、ひびゆっくりと称し堕落した生活を送っている饅頭どもに、労働の素晴らしさを伝えるべく、 ここでは日々早朝から夕方まで、遅いときは夜を徹して徹底的に革命的労働をさせてやるのである。 一年間立派に務めあげたゆっくりには野菜を持たせて森へと帰してやり、そうでないゆっくりはまた一年間畑の世話をする作業を繰り返させてやるのである。 無論後者か途中リタイアしかいないが。 働いている間の賃金は少量の食事と俺からの無償の愛である。愛ならば仕方ないな。 しかしただ働けと言ってこのド饅頭どもが働くはずもない。 酷いときには野菜を食い荒らした後、開き直って、 「ゆゆ! ここはれいむのゆっくりプレイスだよ! ゆっくり出来ないおじさんは出て行ってね!」 などとのたまうありさまである。 このテのを一々口答えするたびに潰していてはキリが無いため、このおゆうぎもロクに出来ない 饅頭どもに、何とか農耕というものを仕込んでやる必要があった。 そこで思いついたのが、「奴隷農耕法」であった。何も一から十まで仕込んでやる必要は無い。 農法を学ぶ自由などこの駄饅頭どもには必要ない。必要な時必要に併せて、やり方を指示し、出来ないのならば仕置きしてやれば良いだけのことである。 そうやって体に直接刻みつけることで、脳?ではなく体?に覚えさせて、日々従順でロボットのような饅頭が作り上げられていくという算段である。 しかし広い農場中のたくさんのゆっくりを、人間が指導管理するというのは如何にも面倒くさい。 労働の省力化という観点からみればマイナスである。 そこで俺はゆっくりのことはゆっくりに任せれば良いという判断を下した。 ここで目を付けたのは、ゆっくりをあっさり殺してしまう、我慢弱いゆっくりれみりゃやゆっくりふらんのような捕食種では無く、 ましてや労働力と同じ種のゆっくりれいむやゆっくりまりさでは無かった。 「ゆゆゆゆゆ……づがれだああああ! ゆっぐりでぎないいいいいい!!」 一匹のゆっくりありすが、地面から生えた雑草を引き抜く仕事を放棄して、ごろんとその場に転がった。 周囲のゆっくり達はその姿を見て何か言いかけるが、すぐに黙々と土に向かい自らの作業に戻った。 起き上ったゆっくりありすは、「ゆっくりしていってね!」と叫ぶが、誰もかまってくれないのを認めると、ぷっくりと膨れ上がって怒り始めた。 「とかい派のありすを無視するなんて、みんないなかものね!」 そう言うと自分の持ち場から離れ、ゆっくりありすはゆっくりまりさの元へと近付いていく。 「まりさー! いっしょにすっきりしよー!!」 「ゆ? ありす。仕事は終わったの?」 「とかい派のありすはこんなやばんな仕事なんてしないのよ! それよりゆっぐりじようよまりざー!」 ありすはまりさへと飛びかかると、自らの頬を押し付けてずりずりと頬ずりを始めた。 「ゆぎゅうぼっ!! やめで! やめでね! お仕事をざぼったら“れんたいせきにん”で ゆっぐりできなんぼおおおおおおお!!!」 「ひがえめなどごろもがわいいよまりざぁああああああああ!!!」 「いやああああああ!! おじおぎはいやあああああああああ!!!」 「はぁはぁ! わだぢがおじおぎじてあげるよまりざあああああああああ!!!」 ありすの頬ずりは勢いを増し、火も付かんばかりである。その様を見ていた他のゆっくり達は、何かに気付いたような素振りをすると、草むしりの仕事を再開した。 無論交尾に熱中するありすとそれに襲われるまりさは気付かないが。 絶頂に達しようとするありすは、まりさに己のリビドーの猛りをぶちまけようと更に体を震わす。 「まりざ! ずっぎりずるよ! わだぢのあいをうげどめでええええ!!!」 「はなじでええ! しごどにもどおっいでえええええええeぷぎゃぁっ!!!」 急に頬の感覚を失ったありすは、目を閉じたまま目の前にいる筈のまりさに叫んだ。 「どぼじでわだぢのあいをうげどめでぐれないのおお!!? ずっぎりざぜでよおお!!!」 しかし答えは無い。いぶかしむありすが目を開けると、そこにはまりさの姿は無かった。 その姿を探して左右を見渡し、そして背後を振り返った。 「ゆゆゆ! まりさ、ここにいたんだねー! いっしょにすっきりしよー!!」 その声に答えるかのように、まりさの体が一瞬浮き上がり振り向いた。 まりさは、割れた額から餡子を垂れ流していた。 「ゆ゛ぅ゛うぅうううう!!? ま、まりざあああああああああ!!??」 「ずっぐぃり、ぢだ、げっがが、これだぼぉ……」 だらだら餡子を流しながら、その場に崩れ落ちるまりさ。 そしてその背後には、まりさをありすの方へと振り向かせたゆっくりが佇んでいた。 その姿を認めたありすは、抑えきれない劣情を発散すべくそのゆっくりへと飛びかかった。 「ゆ、この際だれでもいいからすっきりさせtゆぎゃあっ!!?」 飛びかかったありすは足で踏みつけられ、その顔が地面に押し付けられる。 さきほどちらりと見えた姿から、そのゆっくりの正体がありすにもわかってきた。 青紫色の髪の毛にカチューシャを付け、青い瞳でありすを見下すこのゆっくり種こそ、 ゆっくりさくやであり、しかもメイド服な胴体付きというレアなゆっくりであった。 ありすを踏みつけたまま、さくやはゆっくりにしては「ひんやりー♪」な目を更に冷たく光らせると、ありすに向かって口を開いた。 「おいあなた、仕事はどうしましゅたの?」 「ありすはとかい派だからあんな泥臭い仕事には耐えられないよ! それよりも、いっしょにずっぎりっあびばっ!!?」 ぐに、とありすを踏み付ける足は力を増し、ありすの頭頂部に食い込んでいく。 「もういちどだけチャンスをあげましょう。 あなたのおしごとをいってみろ」 「わ、わだぢはただすっきりじだがっだだけなのにぃいいい!!」 「そう……」 呟くと、さくやはゆっくりと足をありすの頭部から引き抜いた。ありすは許してもらえたのか、と思い、へらへらと笑いながら顔を上げた。 「とかい派のありすをけがしたんだから責任とってもらわないと……ね?」 調子に乗ったありすの顔に、驚愕、そして恐怖の色が浮かぶ。 ゆっくりさくやが右手を高々と掲げて、振り下ろした。 「わたしはサボリ魔がだいきれぇなんだ」 先ほどすっきりしようとしたありすと、そのありすに襲われたまりさ。 更に畑の同じ区域で働いていた、ゆっくりれいむとゆっくりぱちゅりーが、額の傷口から餡子を流すまりさと並ばされ、 さくやが手からぶら下げたありすへの“せいさい”を見せられようとしていた。 ありすは顔中をぼこぼこにされた上、大切な髪飾りを投げ捨てられしまった。 髪の毛を掴まれ持ち上げられているありすは、最早抵抗する気力もなくぶらぶらと揺れている。 「れいむ」 「ゆっ、……はい!」 さくやに声をかけられたれいむは、怯えた表情でさくやに答えた。 「なんでありすとまりさの交尾を止めなかったの?」 「ゆゆ、れいむは真面目に働いていtひでぶっ!」 れいむの言葉が終らないうちにさくやの蹴りが飛び、れいむの顔面に痕を残す。 「だれがおまえのことを聞いたの? どうして止めなかったっていってるの」 「ごめんなざいいい!! ありすにれいぷされそうだったからいやだったんですううう!!!」 「そう」 げし、とれいむを蹴り飛ばすと、次にさくやはぱちゅりーに向き直った。 「あなたは」 「む、むきゅー、ぱちゅりーは体が弱いから何も出来なiぱちゅりりりりーっ!!!」 右頬を張り飛ばされ、体の弱さから中身が偏ったのか、ゆちゅりーはその場に崩れ落ちた。 「石でもなんでもなげて止めなさい。 次まりさ」 しかしまりさは答えを返さず、「ゆ、ゆ、ゆ」と息をするだけである。 さくやが無言で蹴飛ばすと、まりさはぶぴゅると額から餡子を噴き出して、そのまま動かなくなった。 しばらくしてれいむとぱちゅりーが何とか起き上がると、さくやは二人の前にぼこぼこになったありすの顔を突き付けた。 ありすは二人の顔を認めると、ゆっくり何とか口を開いた。 「ゆ、ゆ、ゅ、ゆっくり、たすけ、て、」 「ゆ! ゆっくり仕事も出来ないありすが悪いんだよ!」 「むきゅー! そのままゆっくりしねばいいのよ!」 「どぼじで、ぞんな、ご、ど、いぅのぉ?」 ぐい、と持ち上げられたありすは、髪を引っ張られる痛みに少し呻くが、最早大声を出すことも出来ない。 畑じゅうのゆっくりに見えるように、さくやが高々とありすを吊り上げる。 他のゆっくり達も、なんだなんだとその姿を見ようと近付いてくる。 その姿を見たゆっくり達は悲鳴を上げようとするが、そうすればさくやにお仕置きされることがわかっているので、誰もが口を噤んだままである。 「みなさん! このゆっくりありすはあろうことか仕事中にすっきりしようとするはんかくめいてきな とろつきすとです! これからこのはんどうてきなありすのしょけいをおこないましゅ!!」 「「「「「「ゆゆゆ!!」」」」」」 さくやの言ってることは本人含め誰もわからないが、しかし「しょけい」の意味は何となくわかる。 ゆっくりさくやは、ポケットからプラスチック製の使い捨てナイフを取り出すと、ありすの額に先端を押し付けた。 「さいごに言いたいことはありましゅか?」 「ゆゆゆゅゅゅ、もっと、ゅっくり、ぢだがっだよおおおぉぉぉぉ…………」 「そう、はんせいしていればいかしてあげるつもりだったのにね」 そう言うとさくやはぶすり、と額にナイフを突き刺した。 「ゆぎぃッ!?」 「さぁ、なんぼんめにしぬかなぁ~?」 ざく、ざくとナイフは北斗七星の形をなぞるように、ありすの顔面を蹂躙する。 傷口からカスタードクリームを流すことで、ゆっくりありすの形状が崩れていく。 「もぅ、もうやめでぐだざいっ! ごめんなざいっ!! ごめんなざ、いっ!!!」 余りの痛みにありすは最後の力を振り絞って叫び身を捩るが、何もかもが遅かった。 「しねぇッ!!!」 「ずっぎりいいいいいいいいいうわらばっ!!!!」 ぶぴゅっ、と七つ目の傷から盛大にクリームを噴き出すと、ありすは皮だけになって動かなくなった。 それを投げ捨てると、さくやは居並ぶゆっくりに向かって声をかけた。 「なにをさぼっているのおまえたち!」 「ゆゆ! れーむはさぼってなんかいないよ!」 「ゆ、いそいではたらくよ!」 「れーにんのいってることはわかるーわかるよー」 「ちんぽー!!」 「むきゅー! 」 「くちごたえするまえに働けー! こころをこめて畑のおせわをしろーっ!」 「おぜうさまのために野菜をつくれーっ!!!」 その夕、ゆルホーズのゆっくり達を小屋に追い込んで閉じ込めたゆっくりさくやは、籠一杯の野菜を持って、俺の元まで来た。 「おやさいをおもちしました!」 「よし、そこに置け」 縁側に座っていた俺の隣に野菜を載せた籠が置かれた。 今日収穫されたキュウリとナスを、ゆっくり検分すると一本のキュウリに歯型が残っていた。 「おいさくや、これは何だ?」 「う! それはれいむの歯型です! あとでシメておきますのでどうkえひゃっ!」 「口答えするなタコ」 俺がチョップした頭を押さえ、口から少しわらびもちを吐きながらゆっくりさくやがその場に蹲った。 「どーしよーかなー、これいっぽんでどんだけそんがいがはっせいするのかなー? ……今日はれみりゃ無しね」 「そんなせっしょうな! どぼが、どぼがおぜうさまのおせわをさせてくだざいいいいい!!!」 だらだら目からわらびもちの涙を流しながら、さくやは俺の足にすがりついてくる。うぜぇ。 「あー、わかったわかった。ただし今日はプリンは無しね」 「でも」 「デモもストもあるか。きゅうり一本でどんだけプリンが買えると思ってんだ」 無論きゅうり一本でプリンなんぞ買えんのだが、さくやはそのまま黙ってしまった。 中途半端に頭が良いって損するからヤだねー。 もう日も沈んだ頃に、さくやを連れて家の物置の隣の小屋に行き、そのカギのかかった扉を開けた。 コンクリート打ちっぱなしの、ボロボロの毛布とぬいぐるみの転がった部屋。 その毛布に包まっていたゆっくりれみりゃが、目をこすりながら起き上った。 「うー、おはようだどぉー☆ 」 「はい! おぜうさま! おはようございましゅ!!」 転がるように部屋に入ると、ゆっくりさくやはれみりゃの世話をはじめた。 確認すると、俺は扉を閉じカギを閉めて、家へと戻った。 今日はさくやに冷蔵庫に詰まった、タダで貰った賞味期限切れのプリンを持たせていないから、 れみりゃはすぐに機嫌を損ねるに違いないが、よくもまああんな脳に蛆の沸いたような肉まんの世話を出来るものである。 俺なら「ぷっでぃーん!」とか叫んだ時点で潰してしまうが、これが種のサガってヤツだろうか。 翌日ゆルホーズを覗くと、さくやがいつもより多くゆっくりをいじめていた。 どうやられみりゃの機嫌の損ねるという俺の予想は当たっていたらしい。 「きさまらー! こころをこめてたがやさんかーっ!!」 「ゆっくり働いた結果がこれだよ!」 テーレッテー ゆルホーズから次々に収穫される野菜の数々ぅ! しかし、れみりゃのためと思い働くさくやの知らぬ間にィ! ア! れみりゃの加工所行きと新しいれみりゃ購入が決定していたのだぁ! 次回ィ、饅頭の拳! 「わたしは妹様ふらん! れいむもれみりゃも許さない!」 さくや「お前はもうただの餡子の塊に過ぎん」 ゆっくり書いた結果がこれだよ! ゆっくり十八番~ノンフライ~氏の「ゆっくり咲夜」?を見て想像を膨らませた後、北斗談義してたらこんなのが思いついた。 このおじさんはジャコウみたいな卑劣なおじさんですが、どうせゆっくりさくやのゆっくり脳じゃ自分のおぜうさまが一定期間ごとに出荷されて、 その代わり新しい小さいおぜうさまが来ても気づかないので、本饅頭達は割と幸せだと思います。多分。 「汚物は消毒だ~!」とか「君たちは大事な労働力なんだ」とかも使えるね! このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/594.html
「ゆっくりしていってね!」 俺は家へ帰る途中に突然飛び出してきたゆっくりまりさを避けた結果、俺は自転車もろともお空へダイブした。 キラキラと太陽の光を受けて輝く自転車と川を見て世界全てがこんな風にキラキラしてたらきっと素敵だと俺は思った。 「わ~おそらをとんでる~♪」 こちらを見上げてそんなことをほざいてるゆっくりまりさに心中でやかましいわと悪態を突きつつ 俺は自転車から離脱して受身を取った、この間約2秒。 「ぐぅっ、は、速鷹号おおおおおお!!!」 俺は無傷だったものの我が愛機は突然増水した川に落ちてポロロッカしていった。 「ゆ~おにいさんよかったね!」 「な、何故にホワイ!?」 人の愛機が河童の川流れされたというのにこのド饅頭は何をほざいていらっしゃるのだろうかと俺は驚愕した。 「あんなゆっくりできないのりものにのってたらゆっくりできなくなるところだったよ! これからはゆっくりしていってね!」 俺はかなり豪快なスピードで堪忍袋の尾が切れた。 後悔させてやる。 お前は全てのこよなくスピードを愛する自転車乗り達を敵に回したのだ。 とりあえず俺はゆっくりまりさをマイハウスへと導いたのだった。 「ゆ♪まりさをおにいさんのおうちにつれてきてくれてありがとう! おれいにずーっといっしょにゆっくりしいってあげるね♪」 ゆっくりまりさは俺の家に入るや否や満開のスマイルでお礼を述べた。 この笑顔がこれから苦痛に歪むと思うとドキドキして愉快でたまらない。 「ああ、ゆっくりしていってくれ…できるものならな!」 そう言うと俺はゆっくりまりさの目の前でシババババっと高速で反復横とびを開始した。 「ゆ?!おにいさんゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 俺の余りに素早い挙動にゆっくりまりさは目を白黒させている。 ゆっくりすることを信条とする貴様にはゆっくりしているどころか 全開ギリギリのスピードで動き続ける俺の姿を見るのはさぞかし苦痛だろう。 「ゆぅ~!ゆっくりできないおにいさんとはいっしょにいられないよ! もうおうちかえる!」 そう言うとゆっくりまりさは俺に背を向けて外へ出ようとした。 「おっとそうはイカのコンコンチキ!」 俺はシュッパーンとゆっくりまりさの前に回り込むと今度はゆっくりまりさを中心に体はゆっくりまりさに向けながらぐるぐると回転を始めた。 「ゆぅぅぅぅぅうぅぅぅ~!?やべでよおおおおお!おうちかえしてええええええ!!」 さて、こんな感じで10分ほどまわっていたが自転車で鍛えた俺の足腰も流石にきつくなってきた。 限界をオーバーしてしまうのも時間の問題だろう。 「ゆ?ちょっとゆっくりしてきて…」 「記憶を失え!」 そう言って俺はゆっくりまりさの背後に回り後頭部に水平チョップをかますとゆっくりまりさは気絶した。 「ふぅ…」 俺は脚や疲れた箇所をアイシングしスポーツドリンクを一本のみストレッチを済ませた。 そろそろゆっくりまりさが起きそうになり、俺はまたその目の前で反復横とびをはじめた。 「ゆゅ~……ゆ!?どうしておにいさんがゆっくりしてないの!?」 ゆっくりまりさがぽやぽやとまぶたを上げて目を覚ました。 「くくく…やっとおきたか、俺の余りにもゆっくりしてなさに気絶してしまったお前は気付いて無いだろうが お前が寝てる間ずっとこうやってゆっくりしてないところを見せ続けてたんだぜ…?」 俺はにやりと笑いながら寝起きのゆっくりまりさに言い放った。 「ひぃ!?いやあああああああ!ゆっぐりでぎなよおおおお!おうぢがえる!おうぢがえるうううう!!!」 余りのゆっくりしていない事態にゆっくりまりさは悲鳴を上げた。 「ほう、もうおうちに帰るのかい?随分とゆっくりしてないじゃないか こりゃ俺のゆっくりしてなさがまりさに移ってきたようだな」 「!?まりさはゆっくりしてるよ!ゆっくりしていってね!」 ヒステリーを起こすゆっくりまりさにさらなる追い討ちをかけるとゆっくりまりさはガクガクと震えながらゆっくりを主張し始めた。 「その焦りっぷりがゆっくりしてないのさ!」 俺はさらに反復横とびのスピードを加速した。 「ゆ゛っぐり゛い゛い゛い゛い゛いいいいいいいい!?」 ゆっくりまりさは遂に耐え切れなくなり餡子を口からぶくぶくと吐いて果てた。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/362.html
うちの庭はゆっくり達によく荒らされる。 花壇(すでに雑草だらけ)や池、そして外敵が少ないせいなのだろう。いつの間にかゆっくりが来て荒らしていくのだ。 今は面倒なので荒らされたまま放置しているが、それでもゆっくり達は煩いし何かとうざい。 最初は潰して駆除していたが、飽きずに奴らは来る。ゆっくりの死体を放置していても「はふはふっ」と食う始末だ。きもい。 なのでこの際やつらで遊ぶことにした。 そのために今回使うのは『ギロチン』。そう、首をはねる処刑道具だ。 今回はそれをゆっくりに使うわけだ。 早速庭にいるゆっくり霊夢の家族を部屋に連れていくことにする。 一週間ほどから庭に住み着いているゆっくり霊夢の家族は子ゆっくりが多く、マジでうるさい。 普段は閉め切っている庭への入口を開けるとちょうどゆっくり家族は池の脇でゆっくりしているところだった。 俺は奴らに近づくと『⑨でもわかるゆっくり虐め by阿Q』に従って声をかける。 「ゆっくりしていってね!」と。 「「「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」」」 ああうるさい。特に子ゆっくりの声は甲高くて耳に障る。 「ゆっ、おじさんどうしたの? ここはれいむたちのおうちだよ!!」 「いまみずばでゆっくりちてるのー!」「おじさんゆっくりできるひとー?」 おじさんとはひどい。まだ10代(16進数)だぞ。しかし我慢だ。 「ああ、ゆっくり出来るよ。おにいさんはほら、隣のおうちに住んでいてね。挨拶にきたんだよ」 「そこのおうちはおじさんのおうちだったんだ!」 お、一応そこの分別はあるんだな。ただこの庭も俺の家なんだけどな。 「おじさん!」 バスケットボール大ほどの一番大きな母ゆっくりが話しかけてくる。他の子ゆっくり達は水遊びに戻っていた。 「ん、なんだい?」 「おじさんのおうちはきょうかられいむのおうちにするね!!」 前言撤回。やっぱこいつら分別ないわ。いや、そういう次元の問題じゃないわ。 「あ~、だめだよ。でもおにいさんのおうちに来てゆっくりさせてあげてもいいよ」 「ゆっ! じゃあゆっくりおうちに入れてね!!」 あいよ、と子ゆっくり共々我が家へ入れてあげる。 入ってすぐの部屋が今日のために用意したゆっくり虐待ルームだ。なのでゆっくりに使う道具以外は何も置いてない殺風景な部屋である。 「はい、ここがおにいさんのおうちだよ。ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていくね!!」と母ゆっくり。 「ゆっくりちていくね!」「ゅ!なにもないよ!」「でもきのいたが冷たくて気持ちいいよ!!」 続く子ゆっくりは反応が様々だ。えぇと、全部で11匹か。母親ゆっくり含めて12匹と。 「おじさん、れいむたちのあたらしいおうちには食べ物がないの? ゆっくりもってきてね!」 「ちょっ」 もう新しいおうちとか言いやがった。ありえん(笑) …というかおじさんはいい加減やめて。 「わかったよ。でもその前にゆっくり楽しめるおもちゃで遊ぼうよ」 「あとでいいから食事もってきてね!」といい加減うざい母ゆっくりだが、子ゆっくりは楽しめるおもちゃという言葉に反応する。 「おもちゃ! ゆっくりだしてね!」「ゅーゅー♪」「おもちゃがさきにほしいよ!!」 そんな感じで子供が言うので母親も食事は後でよくなったようだ。 そしてようやくギロチン様の登場だ。 ゆっくり向けに作ったので高さは大体1m。刃はギロチンの高い所に留め具で固定されていて外すと刃は落ちるというわけだ。 さらに刃の背中側には一本の長い縄が付いていてそれを引っ張っていれば留め具がなくても落ちることはない。 ちなみに威力は実証済みだ。腕ぐらいに太い木の枝もバッサリだぜ。さすが冥界の刃だ。 ああ、もう早くこいつらを真っ二つにしたい。でももう少し我慢だ。 「ゆっ? なにそれ???」「たのしめるの??」「おじさんこれでゆっくりできるの??」 子ゆっくりは見たことのない道具に興味心身だ。 「まぁ待てこうやって使うんだよ」 俺はポケットから饅頭を出してギロチンへとセットする。 「ゅー!おまんじゅうたべたいよ!!」「ゆっくりわけてね!!」 なんて言いながらギロチンに突っ込んでくるゆっくりしない畜生どもを弾く。食べ物見るとこれだよ。 「ゆっくり見て行ってね!」 「「「「ゆっくりみていくね!!!」」」」 条件反射でゆっくり挨拶を返すゆっくり家族。扱いやすいなー。 「よーし、みてろよー」 留め具を外す。縄を手から放す。刃が落ちる。饅頭真っ二つ。 まさに一瞬だ。 ゆっくり達もびっくりしてるようだ。 「ゅー、こわいよー!」「おじさんこれじゃゆっくりできないよ!!」「ほかのおもちゃよういしてね!!「あとおかしもだしてね!!!」 さすがのゆっくりも危険なものだと判断出来たらしい。それはむしろ好都合だ。 俺は俺に向かって食事をもってきてねとうるさい母ゆっくりをギロチンの台にセットする。 「ゆゆっ! なにするの!!? ゆっくりやめてね!!!」 無視しながら母ゆっくりが逃げ出せないように固定する。あと、しゃべらせないために口に布をつめてやる。 「むぐーっ! んんぐぐぐぐーーーー!!!」 「ゅ! おじさんなにするの!!」「おかあさんをゆっくりはなしてね!!」「ゆっくりできないおじさんはしね!!!」 子ゆっくり達は勇敢にも体当たりしてくる。しかしダメージなどあるわけがない。 「おいおい、これからが楽しいんだぞ?」 「なにいってるのかわからないよ!! ぜんぜんたのしくないよ!!!」「はやくおかあさんをゆっくりたすけてね!!!」 11匹の子ゆっくりが抗議してる中、俺はギロチンの留め具を外した。 「アーッ!!」「おがあざああああん!!!」「やめでえぇぇぇえ!!!」「ゅーーー!!!」 しかし刃は落ちない。そりゃそうだ。刃に付けた縄を掴んでるので落ちることはない。 「ゅっ! おちてこないよ!!」「ゆっくりたすかったね!!」「おじさんのばーかばーか」「ゅー♪」 「お前ら馬鹿か? 馬鹿だろ? いや、馬鹿だ。俺がこの縄を放したらどうなるか覚えてないのか」 言うと勝ち誇っていた子ゆっくり達の顔が固まっていく。 「い”やぁぁぁぁぁ!!」「おじさんばなざないでぇぇ!!」 「じゃあこの縄をお前らが引っ張れよ。俺はもう放す」 俺はそう言うと縄を刃の上方、ギロチンの頂点に備え付けていた滑車に引っかけると子ゆっくり達に残りの縄を投げつけた。 長い縄なのでゆっくり全員で引っ張れるだろう。 すると子ゆっくり達は数秒考えた。 「みんなでおかあさんをゆっくりたすけるよ!!」「なわをみんなでひっぱるよ!!」「ゅー! ひっぱるょ!」 ゆーゆーと何やら気合い入れると、子ゆっくり11匹は縄を咥えて引っ張りだした。 それを確認すると俺は縄から手を離した。と同時にゆっくり達に襲いかかる重み。 「おもひよ!!」「へも、みんふぁでふぁんふぁればふぁいようふだひょ!!」 翻訳すると重いよ、でもみんなで頑張れば大丈夫だよ、か。いつまで保つやら。 だがしかし、子ゆっくり達の母を思う力は強いようだ。すでに始ってから3時間が経とうとしていた。 がんばってはいる。だが小さなゆっくりほど疲れが見てとれた。 「がんばるなぁ。そんなお前たちに感動したからお菓子用意したぞ」 床に色んな種類のお菓子をばらまいてやった。なんてやさしいんだ俺。 ゆっくり達は物欲しそうな瞳で床に散らばったお菓子を見る。 ちょっと縄から口を放して跳ねれば食べられる距離。そう、母を見捨てて家族を裏切ればの話だ。 子ゆっくり達は家族の絆と食欲の間で揺れ動く羽目になった。 (これからが楽しいところだな) ゆっくり達は食欲に弱いからな。食料が無いために共食いするなんてこともよくあること。 俺は隣の部屋へ移ると、扉にあけた覗き窓から様子を観察することにした。 お菓子を床に置いてから5分程だろうか。もっと短かったかも知れない。 一番のちびゆっくりが食欲に負けてお菓子へと飛び付いたのだ。 「ゅー!おいちいよ! ゆっくりできるー!!」 母や姉にも遠慮せずにバクバク食べるちびゆっくり。 子供なら仕方ない、そう言えるのは通常時のみ。今はゆっくり達にとっては緊急事態なのだ。 乱闘でも起こるかなと思ったがこのゆっくり家族は思いのほか絆が強いようだった。 一番の姉であろうゆっくりは言う。 「ゆっくりみんなのぶんもってきふぇね!!」「おかしみんなでたふぇたらげんきになっておかあさんたすけられるよ!!」 ちびゆっくりを責めず、今のゆっくり達にとって最良になりえる指示を出した。 だが、ちびゆっくりはその言葉を聞くと、 「ゅ! ぃゃだょ!!! これはぜんぶわたちがたべるの!!」 「だめだよ! おがあざんじんちゃうよ!!」 「おねえちゃんがたすけてね! わたちつかれたよ!!」 「つかれてるのはみんないっしょだよ!!」 しかしここで妹ゆっくり達が動き出した。 このままではちびゆっくりに全部のお菓子を食べられてしまう。 一人ぐらい縄を放しても大丈夫だろう。 食欲と集団心理が彼女たちを動かした。 一匹、そしてまた一匹と縄から口を放してお菓子に口をつける。 「はふっはふっ! うっめめっちゃうっめ!!!」 「な"んでみんないっぢゃうの"おぉぉぉぉ!!」 姉の悲鳴が響く。もはや縄を咥えて引っ張っているのは二匹だけだった。 姉妹の中でも大きい二匹だ。少しの間がんばった。つまり少しの間しかもうがんばれなかった。 ザンッ!!!! 「むぐっ!!?」 無常な風切り音と母ゆっくりの小さな断末魔が聞こえた。 見ると母ゆっくりは綺麗に真っ二つに斬られている。少し意識が残っているようだったが、餡子が床へ流れ出て死んだ。 さて、子ゆっくりはというと、 「なんで放したのぉぉぉ!!!」「おねえちゃんのせいだー!!」 「おねえちゃんとはもうゆっくりできないよ!!」「ゆっぐりじねぇぇぇ!!!」 ひどい話である。最後までがんばった姉ゆっくり達を、がんばらなかった妹ゆっくり達が責める。それもお菓子を頬張りながら。 姉ゆっくりはぷるぷると涙を浮かべながら震えていた。それは何かを我慢しているようだ。 「ゅー♪ がんばれなかったおねえちゃんはゆっくりちんでね!!」 一番最初に縄を放し、さらに家族の崩壊を招いたちびゆっくりの罵倒がトリガーとなった。 「うががあああああ!!!」「あががががが!!!」 突然ゆっくりとは思えない叫び声を上げて二匹の姉ゆっくりが暴走する。 二匹が向うのはまずちびゆっくり。 「ゅ!? うべぇっ!!??」 突進してきた姉ゆっくりに反応もできずに潰されてしまった。 もう一匹の姉ゆっくりは生きてるとも死んでるとも判別付かないソレに飛び乗るとそのまま何度も跳ねた。床に広がっていく餡子。 これでちびゆっくりは完全に死んだ。 「ゆ!? おねえちゃんたちやめてね!!」「ゆっくりさせてえぇぇぇぇ!!!」 「やあぁぁぁ!!!」「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"」 鬼と化した姉ゆっくり達に恐怖し、バラバラに部屋を跳ねまわる。 鬼ごっこの始まりだな。ただし鬼は殺る気モードの二匹だ。 追うものと追われるものでは動きがまるで違う。 追われるものは恐怖からか上手く跳ねまわれず、終いには転ぶ。 そうして小さく力の弱いゆっくり達から鬼姉ゆっくりに挽き潰され、噛みつかれ、そして食われた。 「や”あ”あ”あ”!! お、おじさんどこいったの!? おじさんだずげでぇぇぇ!!!」 おにいさんと言え。そしたら考えたかも知れない。あ、だめだ。食われたw そして10分程度でリアル鬼ごっこは終了し、11匹いた子ゆっくり達も姉ゆっくり2匹を残すのみとなった。 体は餡子にまみれ、髪には白髪がまじり、目は恐怖ではなく狂気で見開いていた。 こえぇ、これは子供が見たら絶対泣くぜ。 あまりに怖いからこの二匹はこのままこの部屋に放置しよう。 「ぎゃぅぁあばば!!!」 「なんだなんだ?」 その夜、あの二匹を放置した部屋から悲痛な声が聞こえたので慌てて見に行った。 「こいつら…」 するとその二匹が争っていた。口元には餡子。見ると部屋にまき散らされた餡子が無くなっていた。 ギロチンの周り、母ゆっくりが在った場所にも、だ。 (こいつら食べやがった。あんなに助けようとしていた母ゆっくりまでww) そしていま、お互いを食べようと睨み合っているのだ。 これは食欲じゃないな。お互い食べられるかもと信用できないんだ。 勝負は意外とあっさり終わった。 一匹が体当たりすると、体当たりされたゆっくりは転がっていった。 転がったゆっくりは台に落ちている刃へ当るとそこで止まった。 「ぐぁ…ぅ」 体当たりされたゆっくりは相当な衝撃を受けたせいで朦朧としている。 体当たりしたゆっくりはギロチンの縄を咥えて引っ張った。 数時間前は助けるために引っ張っていた縄。しかし今度は殺すために縄を引っ張った。 動けないゆっくりは、刃が上方に昇ったせいでよっかかる物が無くなったのでギロチン台へと突っ伏す。 それを確認した縄を咥えたゆっくりは、縄を放し、姉妹を処刑した。 「うげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげ!!」 鬼と化し、完全に狂ったそのゆっくりは一晩中笑い続けた。 結局俺はその狂ったゆっくりを野へ放してやった。 殺したら何だか呪われそうだし、家に置いていても笑い方が怖くて眠れないしな。 それからしばらく我が家の周りに種別問わずゆっくりの死体が増えることになる。 数ヶ月後にはゆっくり達の屍の上で鬼のような顔をしたゆっくりが息絶えていたらしいということを聞いた。 終
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1827.html
「盲導ゆっくり」(後編) 前 「ゆっくりおうちについたよ!!」 「ありがとう。今ドアを開けるからな」 かつて本物の盲導ゆっくりがやっていたように、お兄さんを玄関の前へ誘導するまりさ。 お兄さんは、ドアを解錠してまりさを家の中に招き入れた。 「ゆ~!!やっとゆっくりできるよ!!」 ベッドの上に飛び乗って、ぼよんぼよんと跳びはねるまりさ。 木の根もとの穴でも、暗い洞窟の中でもない、人間が人間のために造った快適な住居。 そこで三食不足なく食べ、たまに散歩にも連れて行ってもらえる。もしかしたら遊んでもらえるかもしれない。 バカな人間の、目の代わりを演じてやる。盲導ゆっくりのフリをする。 たったそれだけの代価で、それらが得られる。こんな幸運は二度と訪れないだろう。 そして、一度たりとも手放すつもりはなかった。 「まりさは元気そうだな」 お兄さんは、まりさに寄り添うようにベッドに腰を下ろした。 まりさにとって、目の前のお兄さんはもはや恐れるに足らない存在だった。 これから先も、盲導ゆっくりとしては失敗を重ねるだろう。愚鈍だと思われるだろう。 それでも構わない。この人間は、謝れば許してくれる。話せば許してくれる。だって……バカだから。 「ゆっくりおかしがたべたいよ!!おにーさんはとってきてね!!」 「ん?自分で取ってきたほうが早いんじゃないか?お兄さんはお菓子の場所が分からないし」 「ゆっ……」 まりさは、今日の昼頃の会話を思い出した。 あの時も同じような会話を交わし、自分で台所にお菓子を取りに行ったのはよかったが、その時はお菓子は見つからなかった。 もしここでそのことを正直に言えば、またニセモノだと疑われてしまうだろう。 だから、何としてでもお兄さんにお菓子を取りに行かせなければならない。 「ま、まりさはゆっくりつかれちゃったよ!!だからおにーさんがとりにいってね!!」 「ふぅ…しょうがないな」 お兄さんは気だるそうに立ち上がって、台所へと向かう。 お菓子が楽しみで待ちきれないまりさは、そのお兄さんを先導するように台所へと跳ねていった。 「ゆ!!はやくしてね!!ゆっくりしないでね!!」 「はいはい、ちょっと待ってなさい。まったく、全然疲れてるように見えないよ」 台所の中央に鎮座して喚き散らすまりさを、お兄さんは踏み潰さないよう器用に回避する。 目線と同じ高さにある戸棚を開いて、その中からお菓子を取り出した。 「ほら、お食べ」 「むーしゃむーしゃ♪しあわせ~♪」 やっと人間の食べ物にありつけたまりさは、感動の涙を流した。 こんなに美味しいものを、人間は毎日食べているなんて! こんなに美味しいものを、あのまりさは毎日食べていたなんて!! やっぱり、本物を追い出して成りすました甲斐があった。 まりさは心の中で、ゆっへっへと下品な笑い声を上げた。 「それが食べ終わったら、ちょっと頼みたい事があるんだけど」 「ゆ?いまいそがしいんだよ!!ゆっくりあとにしてね!!」 「うーん、とても大事な用事なんだ。迷子になったまま帰ってこないゆっくりがいてね…」 「うるさいよ!!おしょくじちゅうはしずかにしてね!!」 「その迷子になっている本物のまりさを、探してきて欲しいんだ」 「いいかげんにしてね!!…………ゆ?いま、なんていったの?」 お菓子に夢中になっていたまりさは、聞き間違いだと思った。 “本物”を探して来い。お兄さんは確かにそう言った。聞き間違いではない。 本物って、何?…あれ?おかしいよ?本物を探してくるってことは、まりさはニセモノってことなの? え?あれ?それじゃあこの人間は……も、もしかして……? 「聞こえなかった?……本物のまりさを探してきてね、って言ったんだよ」 「ゆっ!?へ、へんなことをいわないでね!!まりさはまりさだよ!!」 見苦しい悪あがきだった。 足元にいるまりさがニセモノだと確信したお兄さんに対して、その言葉は何の意味もなさない。 お兄さんはにっこり微笑んで、まりさの声がする方向を向いた。 「さぁ、本物のまりさを連れてきてよ。言っておくけど、“本物”だよ?」 これはマズい、とまりさは思った。おろおろと周りを見回しても、何も見つかるわけがない。まったく無意味な行動だ。 しばらく餡子脳を酷使した結果―――とりあえず謝っておこう、そしてその隙に逃げ出そう、そう考えた。 「ゆっ!!ゆっくりごめんなさい!!まりさはゆっくりしたかったんだよ!!」 と謝りながら、すりすりと後ずさるまりさ。 ぴょんぴょん跳ねれば音でバレてしまうが、こうやって移動すれば逃げている事に気づかれずに済む。 何て言ったって、この人間は目が見えないのだ。きっと、気づかないうちに逃げられたことを知って、悔しがることだろう。 「“ごめんなさい”はいいんだよ。それより、さ……連れてきてよ、本物を」 「ゆっ!!ごめんなさいだよ!!ゆっくりごめんなさい!!ゆっくりゆるしてね!!」 お兄さんが顔を向ける方向に、まりさはいない。 既に2メートル、まりさは台所の出口へと近づいていた。 出口に背を向けて、お兄さんの顔をまっすぐ見たまま、少しずつ少しずつ後ろへ下がっていく。 そして、安全な距離を確保できたと判断したまりさは…… 「ゆっくりにげるよ!!」 「あぁ、言い忘れてたんだけど…」 逃亡宣言をし、身体を180度反転させて床を強く蹴って――― 「…そこのドア、閉めっぱなしだよ」 まりさは、台所のドアに正面衝突した。 「ゆべえええぇぇぇえぇえぇぇぇぇうげっ!?」 顔面の激痛に悶えているところを、上から思い切り踏みつけられたまりさ。 無様な声を上げて必死に逃れようとするが、人間に力で勝てるわけがなかった。 逃げられない。まりさは、そのことを身をもって理解したのだ。 「やめでねえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!ごの゛ま゛ま゛じゃゆっぐりでぎな゛いい゛い゛い゛い゛いい!!!」 「さっきから言ってるでしょ?本物のまりさを連れてきてくれさえすればいいんだ。 お兄さんは全然怒ってない。怒ってないんだ。だから、さ……一緒にまりさを探しに行こうよ」 お兄さんは目を瞑ったまま、足元のまりさに微笑みかける。 何だか良く分からないが、まりさはその笑顔が怖かった。何の穢れもない笑顔が、何故か怖かった。 もしここで、“本物のまりさは死んだ”ということを告げたら……自分はどうなる? 「ごべんなざい!!もうじまぜんがら!!もうかってにおうちにはいらないがらゆるじでええええええ!!」 とにかく謝っておこう。泣いて謝れば何とかなる。 まりさは力の限り、声を出し、涙を流し、謝罪の言葉を羅列した。 「あぁそうか。泣いて謝れば許してもらえると思ってるんだな。さすが、ゆっくりらしいや」 「ゆ゛ぉえ゛っ!!??」 お兄さんがまりさを踏み潰す力を強めた瞬間、内圧に押し出されてまりさの口から餡子が吹き出た。 「どうして逃げる必要があるんだい?まりさはここでゆっくりするんだろう?ゆっくりすればいいじゃないか。 そんなゆっくりしているまりさに、ちょっとお仕事を一つ頼んだだけじゃないか」 表情一つ変えず、お兄さんはまりさに呼びかける。 全身を駆け抜ける痛みと、お兄さんの穏やかな語り口調が、まりさを苦しめ続ける。 「簡単なことだろう?“本物のまりさ”を連れてきてくれさえすればいいんだから。 知ってるんだろう?まりさの居場所を。さぁ早く、連れてきてくれよ」 「し、しらないのおおおおおおお!!!だからゆるじてええええぇえっぇぇええ!!!」 うねうねと身体を動かしてみるが、踏み付けから逃れることは出来ない。 それどころか、皮が異常に引っ張られて痛みだけしか得られなかった。 「いやいや、知らないわけがないさ。だって君は自分で殺したじゃないか。本物のまりさを。 本物を殺して、自分が成り代わって、バカな人間を騙して、一生ゆっくりする。そういう作戦なんだろう?」 「ゆ゛!?……どぼぢでしってるのお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!??」 騙そうとしていたことだけじゃない。本物を殺したことも、このお兄さんは知っている。 どうして?どうしてこの人間は全部知ってるんだ?バレてた?そんなわけがない!!だってこの人間は目が見えないんだから!! 「どうしてって、全部説明しなきゃいけないのかい?」 「ゆえっ!!やめっ…やめでねぇ……ぐるじいよぉ……」 ぐいっと足に力を込めるお兄さん。まりさは息苦しくて、喋ることもままならない。 これ以上力を込められたら、まりさは爆ぜて餡子を撒き散らしてしまうだろう。 「一つ目。盲導ゆっくりは自分からお菓子を食べたいなんて言わない。 二つ目。盲導ゆっくりは『ゆっくりさせてね!!』なんて言わない。 うーん、これ以上は面倒くさいや。一番の決め手は……そうだなぁ、やっぱり君の顔にある右頬の傷かな?」 「……ゆっ!?」 すごく重要な前提が、崩れた気がした。 “右頬の傷” まりさ自身も気にした事がなかった傷。存在すら忘れかけていた傷。誰にも気づかれなかった傷。 そんな些細な傷で、ニセモノだと発覚した。だが、重要なのはそういうことではない。傷なんかどうでもいいのだ。 それよりずっと重要な事がある。 どうして、この人間は……目が見えないこの人間は、その傷が分かるんだ? 「よく見ると、本物のまりさと形がちょっと違うよね。本物はまん丸だけど、君はどちらかというと三角型だ」 「ゆっ!!おかしいよ!?おにーさんはなにもみえないんでしょ!?」 「ん?もちろん!何も見えないよ。だって――― そっと、目を開くお兄さん。 眩しそうに目を細め、しばらくして光に慣れるとその目を大きく開いた。 ―――目を瞑ってたら、何も見えないのは当たり前だろう?」 「ゆ…ゆゆゆゆ?……うそだあ゛あ゛あ゛あ゛ぁあ゛ぁあ゛あぁ゛あ゛ぁぁあ゛あ゛あ!!!!」 到底認められるものではなかった。 目が見えない人間だから、ニセモノだとバレない。 目が見えない人間だから、自分はゆっくりできる。 まりさの作戦の前提にあったのは、この人間の目が機能していない、ということだった。 だが、現実はどうだ? お兄さんは両方の目を見開き、じっとまりさの顔を見つめているではないか。 その目が光を詳細に感知し、脳が周囲の状況を把握しているという証拠だ。 「嘘じゃないさ。右が2.0で左が1.5。日常生活ではまったく不自由しない、至って健康な目だよ」 「だましたの……ゆっぐじ…だまじだのぉおお……!!??」 「騙した?人聞きの悪いことを言わないでくれよ。 僕は君に“目が見えない”などと言ったことは一度もない。“何も見えない”とは言ったけどね」 まりさは、固まったまま動けなかった。 “目が見えない”のと“何も見えない”のと、何が違うのか……ゆっくり考えて、そして理解できた。理解できてしまった。 そして、今までお兄さんはそれらしい素振りを見せてきたのに、まりさはまったく気づかなかった。 目が見えるから、まりさにぶつからないギリギリのところに腰を下ろす事が出来たのに。 目が見えるから、まりさを踏み潰さずに戸棚を開ける事が出来たのに。 まりさはそのことに、今に至るまで気づいていない。 「さて、盲導ゆっくりを殺しちゃったまりさには、弁償してもらわないとな」 「ゆっ!?べんしょう?」 「盲導ゆっくりを育てるのには、とてもお金がかかるんだ。だからそれを殺したまりさは、お金を払わなくちゃいけない」 「お、おかねなんかもってないよ!!ゆっくりあやまるからゆるしてね!!ゆっくりさせてね!!」 ははは、とお兄さんは呆れたように笑い、台所の戸棚からアイスピックを取り出した。 「だったら、まりさが代わりに盲導ゆっくりにならないとね。これからは盲導ゆっくりとして、ゆっくりしてもらおうかな」 「ゆ?……ゆっくりできるの?ゆっくりさせてくれるの?」 「もちろんさ。君はバカな人間を騙してただけ、そして盲導ゆっくりを殺しただけで、何も悪いことはしてない。 だから、ゆっくり出来ないわけがないだろう?盲導ゆっくりになれば、思う存分ゆっくり出来るよ」 「ほんとう?だったらまりさは“もうどうゆっくり”になるよ!!」 跳びはねて喜ぶまりさを見て、お兄さんはにやりと笑った。思い通り、という顔だ。 ゆっくりの“ゆっくり”と人間の“ゆっくり”は、同じとは限らないのだ。 「よし、そうと決まったら早速」 跳びはねるまりさを鷲づかみにし、その右目にアイスピックを突きつける。 そして、すっと息を吸い込んで、アイスピックを握る右手に力を込めた。 「ゆっ!?なにをするの!?ゆっくりできないよ!?ゆっくりやめてね?」 「まずは、目が見えない人の気持ちを学ぼうか」 「どうしてそんなことするの!?ゆっくりさせてね!!めがないとゆっくりできないよ!?やめてやめてやめt――― ザグッ!ザグッ! 「ゆっがぁぁぁあっぁrがえrがえろmpごぱえおmぽmpろmp!!??」 眼球がくりぬかれた穴から餡子が飛び出す。両目を失ったまりさの叫びが、家中に響き渡った。 先ほどまで目があった場所を、焼け付くような痛みが蝕む。 お兄さんは手のひらの上で2つの眼球を転がし、その感触を楽しんでいる。 「おーぷるぷる可愛い眼球だねぇ。食べちゃいたいぐらいだよ」 「やめでえええええええ!!!までぃじゃのおめめがえじでえええええええええ!!!!」 ぶるんぶるんと身を震わすまりさ。まったく見当違いの方向を向き、お兄さんに訴えかけている。 お兄さんはくすくす笑いながら、パンパン手を叩いてまりさを自分の方向に導いた。 「ほら、こっちこっち!!お兄さんのところまで来たら、お菓子をあげるよ!!」 「ゆっ!?おかしっ!?ゆっくりだべさせてね!!」 “お菓子”という言葉が食欲を刺激し、一時的に自分の眼球のことを忘れるまりさ。 お兄さんが手を叩いて導いてくれるので、どちらに跳ねていけば良いかはよくわかった。 「ゆっ!そっちにいるね!!ゆっくりいくよ!!ゆっくりぶぎゅえ!?」 お兄さんのいる方向へまっすぐ跳ねていったまりさは、いつの間にか床に置いてあった画鋲を踏んづけてしまった。 鋭い針が勢い良く体内に入り込み、それは足の痛みとしてまりさを苦しめる。 「ゆぎゅっ!!ひどいよ!!ゆっくりさせてね!!」 「気をつけないとダメだよ。世の中何があるかわからないんだから」 と言いながら、お兄さんはまりさの行く手を阻む画鋲をさっと除けてやった。 その音を聞き、まりさはもう進路上に障害物はないと判断する。 「ゆ!こんどこそゆっくりいくよ!!ゆっくりおかしをちょうだいね!!」 目が見えないというのに、躊躇いなく跳ね進むまりさ。 進路上にはなにもない。踏んで怪我をするようなものも、踏んで壊れてしまうようなものも、何もない。 自分の都合のいいように、根拠なく決め付ける。その結果、まりさは大切なものを失うことになる。 お兄さんのところまであと一歩、というところまで迫ったときだった。 「ゆっ!!すぐちかくにいるね!!ゆっくりもうすぐだよ!!」 ぶちっ!ぶちっ! まりさが着地すると同時に、何かが爆ぜる音が聞こえた。 ぬるぬるとした感触が、まりさの底部に伝わる。 「あーあ、やっちゃった」 全てを見ていたお兄さんは、呆れたように呟いた。 一体何が起こったのか、まりさは理解できていない。 何も見えないこの状況では、底部に残る気味の悪い感触からしか判断するしかないのだ。 「ゆ?……まりさはなにをふんだの!?ゆっくりおしえてね!!」 「まりさが踏んだのは、まりさに食べさせるはずだったお菓子だよ」 お兄さんは、正直に答えた。 すると、何を思ったのか……まりさはうねうねと動いて、踏みつけたお菓子の残骸を底部から取り払い始める。 「ゆっ!!おかしをたべるよ!!ゆっくりたべるよ!!」 床に落ちた破片を、這うようにして探し当てて口に運ぶ。 「むーしゃむーしゃ♪しあわせ~♪」 口の中に広がる甘みが、まりさを幸せにさせる。 そして、お菓子二つ分の破片を食べつくすと、やっと大事なことを思い出したようだ。 「ゆっくりおいしかったよ!!こんどはまりさのおめめをかえしてね!!めがみえないとゆっくりできないよ!!」 今から眼球を戻せば、視力が回復すると思っているらしい。 実際、ゆっくりならそれで元通りになるのかもしれないが。 「目?何言ってんだ。今食べただろう?」 「……ゆ?」 聞き間違いだと思ったまりさは、もう一度お兄さんに目を返すよう要求する。 「そんなことはどうでもいいよ!!ゆっくりおめめをかえしてね!!」 「何度も言わせないでくれ。お前の、目は、お前が、今、食べたんだよ」 返ってきた答えは同じ。意味する内容は同じ。お兄さんはとても分かりやすく教えてくれた。 口の中に広がる、餡子の味。その正体をまりさは知った。知らされてしまった。 「ゆっ!!ゆっくりはきだすよ!!ゆべっ!!ゆべえええええぇぇぇぇぇぇえ!!!」 なんとか自分の目を取り戻そうと、体内の餡子を吐き出すまりさ。 まともな思考が出来ないまりさは、そんなことをしても手遅れだということに気づかない。 「もう遅いよ。君が踏み潰した時点で、あの目はもう治らない」 「ゆああああぁぁぁぁぁ!!!そんなこといわないでえええぇぇえ!!!ゆっぐりでぎないいいいい!!!」 ぐちゃぐちゃに潰れた目を吐き出したところで、それをどうしようと視力は戻らないのだ。 「自分の目は美味しかったかい?自分の目を食べるなんて、とてもいい経験をしたね!」 「ゆっがぁあぁっぁあぁぁ!!!おまえのせいだっ!!おまえがわるいんだああっぁあぁぁじねええぇぇぇぇぇぇ!!!!」 お兄さんに体当たりしようと大きく跳びはねるまりさ。 だが、まりさが飛んでいったのはまったく正反対の方向だった。 「ゆっぐりじねえええええええぴぎゃっ!?」 真正面から壁に激突し、べたんと床に落ちる。 痛みにのた打ち回るまりさは、今度は反対側の壁にぶつかって悶絶した。 「んひゅうううううううやっばりおめめがないどゆっぐじでぎない゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!」 今度はダメージを抑えるために、床を這いずってゆっくり移動するまりさ。 それが偶然にも、お兄さんがいる方向だった。どこから取り出したのか、右手にハエ叩きを握って待ち構えるお兄さん。 そして、もう少しでお兄さんにぶつかるというところで、まりさの顔面にバシンと一撃見舞ってやった。 「ゆびっ!!ごっぢじゃゆっぐじでぎないの!?」 もうお兄さんを殺すという目的も忘れ、ゆっくり出来る場所を探すことに夢中になっている。 そして、方向を変えて這いずり始めたまりさの顔面を、またまたハエ叩きで殴りつけた。 「ひゅっ!?ごっぢもなのお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!??」 まりさが進行方向を変え、ほんの少し進むたびに正面から攻撃を加える。 身体の損傷はないが、まりさにとっては耐えがたい激痛。それが向きを変えるたびに襲ってくる。 そんなことを50回も繰り返すと……まりさは、ぴたりと動かなくなった。 「ゆっ…ここからだじで!!ここじゃゆっぐじでぎな゛い゛よ゛!!」 まりさは、自分が狭いところに閉じ込められたのだと勘違いしている。 実際はまりさの周りは何もなく、動き回ろうと思えば自由に動きまわれるというのに…… 目が見えないばかりに、痛みのみに支配され、痛みだけを信じ、それを疑わなくなってしまった。 そこには何かがある。何もないのに、まりさにとっては何かがある。だから出られない。ゆっくりできない。 「おにーさん!!おねがいだよ!!ここからだしてゆっくりさせて!!」 「さて、お兄さんは買い物に行ってくるから、そこでゆっくりしててね!」 ばたんと、扉を閉じる音が聞こえた。 その音でまりさは、お兄さんが出て行ったのだと判断する。 仮に、お兄さんが中にいて扉を閉めただけだとしても、まりさはそうだと気づかない。 それが、見えないということ。目の見えないまりさを支配するのは、音と痛みだ。 「ゆっ!!やめでっ!!おいでがないで!!おねがいだがらゆっぐりさせてよ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛ぉぉぉぉぉ!!!!」 喚き散らすも、その場から動こうとはしない。 動けばまたあの痛みに襲われる。それが怖いから動かないのだ。 まりさを閉じ込めているのは、透明な箱でもなんでもない。 それは、自分自身だ。 それから、同様の事が何度も繰り返された。 3日も経つと、まりさは自分の周りに存在しない壁を作り上げてしまった。 呼んでも、そこから出ようとしない。 食べ物を与えようとしても、そこから出ようとしない。 寝せようとしても、そこから出ようとしない。 まるで、見えない結界が張られているかのように、まりさは閉じ込められていると思い込んでいた。 それを見て、お兄さんは“とてもゆっくりしているね”と褒める。 その言葉を聞いて、まりさは何も言わず涙を流した。 喋れば身体が動く。身体が動けば、痛いものに触れてしまう。 だから動けなかった。 お兄さんを罵りたくでも、それが出来なかった。 そして。 何も食べず、何も飲まず、何も出さず。 まりさは、死ぬまでの半年間、ずっと30センチ四方の正方形の上でゆっくりし続けた。 それはある意味、究極のゆっくりだった。 (終) あとがき お兄さんが盲導ゆっくりを飼ってた理由? 指導員だったんじゃないですか?たぶん。 作:避妊ありすの人 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2391.html
■ゆっくり昼メロ ここは静かな森の中──ではなく、都心に程近いベッドタウンの一画。 川原の土手に掘られた巣の中に、あるゆっくりの家族が住んでいた。 まりさ種とれいむ種の両親を持つ、まりさ種とれいむ種の子供達。 土手を訪れる人間は少なかったので、四匹はそれなりにゆっくりした毎日を過ごしていた。 今日も家族でご飯をむーしゃむしゃし、ゆっくり食後のお昼寝タイム。 ゆっゆっとくつろいでる家族の姿を見て、親まりさは幸せな気分に浸っていた。 愛しいれいむに、可愛い子供達。 あんなに小さかった子供達が、こんなにゆっくり大きくなった。 でも、そのおかげで、ちょっぴりお部屋が狭い。 子供達の成長は嬉しいが、この問題は何とかしないといけない。 「ゆふぅ、子供達も大きくなって、ここも狭くなってきたんだぜ」 「そうだね、子供達のために新しい部屋が欲しいね!」 「まりさ、じぶんのへやがほしい!」 「れいむも! れいむも!」 「よーし今日はみんなで、おうちをリフォームするんだぜ!」 「「ゆっくりリフォームしようね!」」 思い立ったら即実行。家族はさっそく、巣穴の拡張工事を始める事にした。 まずは親まりさの指示が飛び、お部屋の位置が決められる。 子供達はお部屋予定地まで行くと、すぐにゆんしょゆんしょと穴を掘り始める。 川辺の湿度が高い土壌なら、子供達でも楽に掘り進む事が出来るのだ。 頑張ってる子供達の姿に、親れいむはゆっくりにっこりした。 ゆっくり一家は幸せに包まれていた。 この瞬間までは。 「せんぱーい! ありました! ありました!」 「ディ・モールト! よーし、よーし、ご褒美に角砂糖が欲しいか? 三つも! このいやしいんぼうめ!」 「いいから、さっさと作業しましょうよ。遊びじゃないんですから」 「冷たいマシーンだよ、お前は」 外から聞こえる人間達の声。どうやら巣の前まで来てるらしい。 人間には、ゆっくり出来るものもいれば、ゆっくり出来ないものもいる。 どちらつかずのその存在は、いつも野良ゆっくりの餡子脳を悩ませる。 警戒するに越した事はないのだが、幸か不幸か、人間とゆっくりは会話をする事まで可能だった。 親まりさは決断を下した。 「みんなお家に隠れてるんだぜ! まりさがお話してくるんだぜ!」 「おかあさん、あぶないよ! いっちゃダメだよ!」 「お母さんまりさの言う事を聞いてね? 子供達はれいむの後ろに隠れてね」 「ゆぅ……わかったよ……」 家族に見送られ、颯爽と外へ飛び出してく親まりさ。 その背には親としての威厳が満ちている。 子供達を後ろに庇いながら、親れいむは、親まりさなら何とかしてくれると信じていた。 怖い犬さんがお家に来たとき、まりさは飼い主のおじいさんに言って追い払ってくれた。 犬さんはあれからずっと来ない。まりさのおかげだ。 だから今度も大丈夫。まりさなら大丈夫。 「お、おにーさんたち! まりさのおうちに、なにかような……ゆべっ!」 「せんぱーい、一匹確保しましたー」 「よし、そのままボックスに入れとけ」 「はなすんだぜ! まりさはお空を飛びたくないからやめるんだぜ!」 親いれむの祈りは、人間達の手によって、あっさりと折られた。 土手に響く親まりさの悲痛な叫び。 だが人間達がその声に耳を貸す事はない。 それもそのはず。彼らは保健所から仕事でやって来たのだ。 人間達はつかみ上げた親まりさを、そのまま側にあった箱の中へと閉じ込める。 親まりさの入った箱がガタガタと震える。 きっと中で大声を出して泣き叫んでいるのだろう。 だが近隣住民に配慮し、完全防音で設計されたこの箱からは、呻き声ひとつ聞こえて来なかった。 「しかし、あの爺さん。このくらい自分でやって欲しいですよね」 「そう言うなよ。これも俺達の仕事のうちだからな」 彼等の勤める保健所に、先日一件の電話があった。 飼い犬が散歩のたびに野良ゆっくりに構って困っている。だから何とかして欲しいらしい。 そんなの放っておけよとも思ったが、野良犬を追い回すのに比べれば、遥かに楽な作業だ。 ちょうど手が空いていたので、ちょこっと行って、ささっと済ませてしまう事にした。 これで保健所は仕事してないと言う人間が一人減るだろう。 「せんぱーい、これ巣の中にもまだいるんですかね?」 「んー、そうだなぁ……ゆっくりしていってね!」 「「ゆっくりしていってね!」」 「あー、いるなぁ。掃除機持って来い。掃除機」 「わかりましたー」 後輩らしい職員が、土手の上に停めたワゴンから掃除機を持ち出してきた。 そこらで売られている、いたって普通の掃除機だ。 ちゃんと充電されてるか確認し、吸気を中にセット。ノズルをスキマ用に換装する。 これで準備完了だ。 「それじゃ行きますね」 「土はあまり吸わせるなよ。壊れるから」 「りょうかいー」 後輩職員の返事と共に、掃除機の電源が投入される。川の静寂を掃除機の吸気音が乱す。 直径30cm程の穴の中に、細かい土埃を吸いながら、長いスキマ用ノズルがゆっくりと進入していく。 巣の奥で震えるゆっくり一家に、スキマ用ノズル別売り1980円が迫る。 「ゆゆっ!? おかあさん、なんかきたよ!」 「ゆぇ~ん、なんだかゆっくりできないよぉ~」 「大丈夫だからね! お母さんの後ろから離れな……ゆべべべべっ!」 ノズルの先端は手始めに、巣の入り口に一番近かった親れいむの頬を捉えた。 その四角い口はピタリと吸着し、狙った獲物を決して逃さない。 激しく動くと、頬が破れてしまうかも知れない。 中の餡子まで吸いだされてしまうかも知れない。 怖くて動けない。成すがままになるしかない。 親れいむは掃除機の吸引力に戦慄した。 「よっしゃ、ヒットー」 「よーし、そのまま、ゆっくり外に出してね!」 「りょうかいー」 「ゆっぐりぃいいいい……」 捕らえられた親れいむが、そのままズリズリと巣の外へと引っ張り出される。 ノズルの先端には親れいむが、親れいむの表情には恐怖が張り付いてる。 後輩職員はその姿を確認すると、掃除機の電源を落とした。 吸引力を失い、親れいむの身体に自由が戻る。 親れいむはそのチャンスを逃さなかった。 ゆっくりせずに、ノズルの側から跳ね逃げようと試みる。 しかし後輩職員はもっとゆっくりしていなかった。 素早く伸びた腕の指先が、親れいむの後頭部をがっしりと掴みこむ。 親れいむの夢は儚くも奪われた。 怖いよまりさ。助けてまりさ。 親れいむは愛する親まりさの姿を探した。 だがその姿はどこにもない。 ああ、きっ人間のせいで大変な事になったんだ。 観念した親れいむは、せめて子供達だけは助けようと決心した。 「ゆぐぐ……お、おにーさんたち、れいむで最後だから、もうやめてね!」 「せんぱい、まだいるみたいです」 「よーし、もっかい入れてみろ」 後輩職員の指先が、無情にも掃除機の電源をオンにする。 三大神器の名を冠する悪魔は、再び命の炎を燃え上がらせた。 そして、ゆっくりうめぇぱねぇとばかりに、その口を巣穴の奥へと伸ばしていく。 「ゆゆっ!? ま、またきたよ!」 「ゆぐぐ……れいむ! れいむは、そのあなにかくれててね!」 言うが早いか、子まりさは子れいむの身体を突き飛ばした。 その先には、リフォーム途中で掘り返されたままの空洞が開いている。 子れいむはすっぽりと丸い穴の中に納まった。 「れいむ! ぜったいしゃべっちゃダメだよ! なにがあってもだよ!」 「ゆっ! でも!」 「いいから、だまってね! しずかにゆっくりしててね!」 子まりさはそう言い放つと、急いで子れいむの上から土を被せていく。 子れいむの姿はすぐに地面に下へ隠れた。 れいむだけでもゆっくりしてね。 心の中でそう呟くと、子まりさは獲物を求めるノズルへと体当たりをしかける。 「ゆべべべべべえぇ!」 何と言う吸引力。 両親の愛情あふれたちゅっちゅとは比べ物にならない。 粗野で乱暴なそれに、子まりさの柔肌を、抉るような激痛が走る。 だが引くわけにはいかない。 苦痛に顔を歪めながら、子まりさはその力に身を預ける。 身体がずるずると引っ張られ、気がつくと目の前には母の顔があった。 「ゆぐぐっ……おかあ……さん……」 「まりさぁあああ!!」 引きずり出された我が子の姿に、親れいむが慟哭する。 自分が捕まった時より余程悲しいのだろう。 その顔は白目を剥いて、歯茎をガチガチと震わせている。 目の前の光景に、後輩職員は僅かに眉をしかめた。 ある思いが、ふと頭をよぎったのだ。 だがそれは、無限に続く思考の落とし穴だ。 この仕事を続けたいのなら、その穴の中を覗いてはいけない。 後輩職員はすぐに気を取り直し先輩職員に声をかける。 「せんぱーい、やっぱまだいましたー」 「んじゃ俺が二匹まとめてボックスに入れとくから、お前はもっといないか探してみてくれ」 「りょうかいー! あ、そうだ先輩。やっぱ、さっきの角砂糖くださいよー!」 「持ってないよ、そんなもの!」 「ですよね!」 数時間後、ようやく静かになった巣の中で、子れいむがゆっくりと土の中から顔を出した。 巣の中には何も残されていなかった。 家族の匂いがする藁のベッドも、宝物の綺麗な小石も、そして掛け替えの無い家族の姿も、何一つ残されていなかった。 残されたのは、子れいむだけ。 子れいむは何とか生き延びる事に成功したのだ。 これもひとえに、子まりさの機転のおかげだろう。 あのまま巣の中にいれば、子れいむは確実につかまっていた。 子れいむは知らないが、寝床が掃除機のノズルに詰まったのも良かった。 先輩職員は後輩職員を罵るのに夢中になり、巣を埋めるのも忘れて帰ってくれた。 子れいむの家族を連れて……。 こうして、れいむは一人になり、ゆっくり出来るものを一つ失った。 それからのれいむの生活は、泣いて、食べて、眠る、この繰り返しだった。 残された巣の中で一人眠り、目が覚めたら巣の前の土手で草や虫を食べる。 涙はれいむの身体から勝手に溢れてきた。 しかし、そんな生活も長くは続かない。 何日かたった頃、れいむはある異変に気がついた。 巣の周りで取れる食料が減ってきているのだ。 昆虫も草も有限ではない。後先考えず食べた結果がこれだった。 このままだと食べる物が無くなってしまうかも知れない。 そう考えたれいむは、親まりさが普段どうしていたのか思い返してみた。 親まりさの持ってくる食料の中には、確かに巣の周りにある物もあった。 だが一番多かったのは、人間の食べ残したご飯、つまり生ゴミだ。 れいむには、そういった物がどこにあるのかの知識は全くない。 こんな事になるなら、どこから持ってくるのか聞いておけば良かった。 れいむは後悔したが、今更悔やんでも、どうとなるものではない。 こうなったら自分で探し出すしかないだろう。 人間の物は、やはり人間の場所にあるのかも知れない。 明日は人間の場所に、ご飯を探しに行こう。 れいむはそう決意すると、明日に備えて深い眠りについた。 次の日、れいむは産まれて初めて、巣から遠く離れた住宅街へとやって来ていた。 「ゆ~、おっきなおうちばかりだよ~」 これまで遠くから眺めてるだけだった場所。 物珍しさも手伝って、れいむは何だかわくわくしてきた。 どこかに、すごくゆっくり出来る場所があるかも知れない。 れいむは、まだ見ぬゆっくりプレイスを求めて跳ね進む。 当初の目的は、すっかり忘れ去られていた。 れいむにとって人間の街は、それほど危険なものでは無かった。 珍しくも無いゆっくりに構う人間は少なかったし、れいむ自身も人間に関わろうとしなかった。 人間はよく解らない。優しく撫でてくれる人間もいれば、家族を奪う人間もいる。 それなら迂闊に話しかけない方が良い。れいむは、そう考えていた。 しばらくすると、れいむの姿は公園のベンチの上にあった。 ここにいるのには、単純な理由がある。 公園の前を通りかかったさい、人間に餌を貰っているハトを見かけたからだ。 羨ましく思い遠くから見ていると、何故かれいむの方にも食べ物を投げた。 ここは割とゆっくり出来るのかも知れない。 そう思ったれいむは、疲れた身体をここで休める事にしたのだ。 公園でゆっくりしながら、れいむは何度か見かけた他のゆっくりの事を考えていた。 れいむは今日まで、家族以外のゆっくりを見た事がない。 初めて会った他のゆっくりは、大きく分けて二種類いた。 一つは人間と一緒にいて、ニコニコと微笑んでいるゆっくり。 サラサラの髪に、ふっくらとした頬、目が覚めるような美ゆっくり。 是非ともお近づきになりたがったが、残念ながら、お話する機会は無かった。 もう一つはれいむ同様、街をふらふらと跳ねてるゆっくり。 ベトベトの髪に、げっそりとした頬、目を覆いたくなるようなゆっくり。 それでもお近づきになりたかったが、残念ながら、れいむを見かけると隠れてしまった。 自分はどちらに見えるのだろう? 自問するまでも無い。間違いなく後者だ。 土埃に汚れた自分の身体を見て、れいむは重たいため息をついた。 次の日も次の日も、そのまた次の日も、れいむは住宅街に通い続けた。 すっかり忘れていたご飯の在り処が、翌日あっさりと見つかったからだ。 れいむが見つけたのは、親まりさ同様、ゴミの集積所だった。 朝早く出かけたれいむの目の前で、野良ゆっくりが袋を噛み破り、中から人間の食べ物を見つけ出し跳ねて行く。 れいむも他の袋で真似てみると、思いのほか上手くいった。 それからというもの、れいむは毎朝ゴミ集積所に通っていた。 ただし生ゴミは毎日出されているわけではない。 餌にありつける日もあれば、手ぶらで巣に戻る日もある。 その上、他のゆっくりや、犬、猫、カラスまでもが、餌を求めてやって来る。 特に後ろの三つは逆にご飯にされる可能性まであり、その競争率は高かった。 誰よりも先に袋を開けなければならない。 おかげでれいむは、早起きゆっくりになってしまった。 れいむのゆっくりがまた一つ消えていた。 「ゆゅ~ん♪ きょうはいっぱい、ごはんがあったよ~」 れいむはご機嫌だった。 ゴミ集積所に一番乗りし、普段より多目の食料を確保する事が出来たのだ。 さっそく巣へと持ち帰り、ぽっかり空いた穴の中へと仕舞い込む。 れいむの命を救ったあの穴が、今では貯蔵庫としてれいむの命を繋いでいた。 念のため土をかけて穴を隠すと、今度は巣の外へ出て、汚れた身体を川で洗い流す。 川辺の浅い場所でなら、溺れてしまう事はないので安全だ。 だが、それでも長居をすると溶けてしまう。 早々に切り上げると、身体に付いた水滴をブルブルっと震えて弾き飛ばす。 それから、水面に写る多少マシになった姿を確認すると、再び住宅街に向けて跳ねて行く。 公園に行くためだ。 れいむはご飯の貰えた公園に、ちょくちょく足を運んでいた。 たまにハトの餌が貰えるためだが、理由はその他にもある。 この公園には、主人と一緒に飼いゆっくり達が遊びに来るのだ。 自分と違い美しい姿をしたゆっくり達。 妬ましい気持ちもあったが、それを上回る程、彼女達の姿を見ているとゆっくり出来た。 話しかけてお友達になりたい。 れいむは常々そう考えていたが、生憎とこれまでその機会は訪れなかった。 どのゆっくり達も主人の側から離れない上、遊び終えると帰ってしまうのだ。 しかし今日は違った。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆゆっ!? ゆっ、ゆっくりしていってね!」 公園にやって来た飼いゆっくりの一人が、ベンチの上のれいむに話しかけてきた。 種類はまりさ種。大きさはれいむと同じくらいある。 ふと自分を庇った姉妹まりさの事を思い出すが、同じゆっくりじゃないのはゆっくりにだって解る。 よく梳かれた髪は太陽の光を含んでキラキラと輝いているし、栄養の行き渡った肌には傷一つありはしない。 完全に別ゆっくりだ。そしてすごく美ゆっくりだ。 「どうしたんだぜ? おなかがいたいのかなんだぜ?」 「ゆゆっ!? だ、だいじょぶだよ! れいむはげんきだよ!」 思わず見とれてしまっていた。 早く何かお話しないと。 自分はこんなお友達が欲しかったのだ。 今がそのチャンスなのだ。 れいむは何とか話を繋ごうと話題を探す。 「ま、まりさはひとりできたの?」 「ちがうんだぜ。むこうにいるおにいさんといっしょにきたんだぜ」 そんな事は聞くまでもない。 こんなに綺麗なのだ。 人間と一緒に決まっている。 言うべき事はこんな事じゃない。 言わなきゃいけない。 お友達になって欲しいと言わなければならない。 「あ、あのね……」 「れいむがひまなら、まりさとおともだちになるんだぜ。すなばで、いっしょにあそぶんだぜ!」 「う、うんっ!」 ベンチから跳ね降り、前を跳ねるまりさの後をついていく。 れいむの餡子に暖かいものが染み渡る。 自分の言おうと思っていた言葉。 それを向こうから言ってくれた。 自分とは天地程も離れた美しいまりさが。 その口から。 れいむはまりさと砂塗れになって遊んだ。 遊びつかれると、お兄さんに水道で綺麗に洗って貰った。 まりさとお兄さんは、このすぐ近くに住んでいるらしい。 「もうお昼だから、家で食べて行きなよ」 二人のお家にお呼ばれした。 お兄さんの作ってくれたご飯は、これまで食べたどんな物よりも美味しかった。 その後、まりさと日が暮れるまでゆっくりした。 いつの間にか、窓から射す光が赤くなってる。 夜は危ない。早くお家に戻らなくては。 時間を忘れてゆっくりした結果がこれだよ! 「ゆっ! まりさ、れいむはそろそろおうちにかえるよ!」 「わかったんだぜ! それじゃ、またあしたあそぶんだぜ!」 「うっ、うんっ! あしたもこうえんにいくよ!」 明日もまりさと一緒にゆっくり出来るなんて、まるで夢みたいだ。 二人に門の前で見送ってもらい、れいむは弾む足取りで帰宅する。 早くお家に帰って寝よう。そうすれば明日がやって来る。 明日になれば、またまりさとゆっくり出来る。 明日の事を考えると、とてもゆっくり等していられなかった。 それからのれいむの毎日は、楽しく幸せに満ちたものになった。 公園に行けばまりさに会える。 れいむは足しげく公園に通った。 まりさは毎日、公園に遊びに来てくれた。 お兄さんが一緒じゃない時でも、まりさは公園に来てくれた。 まりさにはお家に、専用の出入り口があった。 本当はお庭以外行っちゃいけないんだけど、お兄さんには内緒なんだぜ。 そう言い、まりさは笑った。 自分のためにそんな危険を犯してくれるなんて、なんて素敵なゆっくりなんだろう。 れいむは公園のベンチの上で、まりさと寄り添いゆっくりする。 擦り合わせたまりさの身体は、自分とは比べ物にならないほど滑らかだ。 もっとその肌を味わいたい。 れいむは身体を揺らすたびに、自分の餡子が熱く火照っていくのが解った。 そんな二人がすっきりするのに、さして時間はかからなかった。 すっきりしても二人の頭に茎は生えなかった。 だから赤ちゃんは出来ていない。 れいむの餡子脳はそう判断し、内心ほっとしていた。 まりさとの赤ちゃんが欲しくないと言えば嘘になる。 あんなに素敵なゆっくりとの赤ちゃんなのだ。 きっとすごくゆっくりした良い子が生まれるだろう。 でも、れいむは、まだまだまりさと遊んでいたかった。 二人きりでゆっくりしたかった。 家族を持つのは、もっと先の話だと思っていた。 そう信じていた。 これが茎型の出産なら、違う結果になっただろうか? いや、結果は変わらなかっただろう。 悪意が今よりも少し早く、れいむの心を蝕んだだけだ。 妙に身体が重い。いつもより高く跳ねられない。 お兄さんから貰った美味しいお菓子を食べ過ぎたせいかも知れない。 最初はその程度の認識にすぎなかった。 だが、すっきり後4~5日した辺りから、れいむの身体は急激に成長を始めた。 れいむは最近、太りすぎなんだぜ。 まりさがそう言って笑っていたのを思い出す。 失礼しちゃうよ。ぷんぷん。 そう返した自分は、どんなに愚かだっただろう。 だが今なら解る。 あの頃から、自分の中で、新しい命が成長していたのだ。 そして今も、両親に会うため懸命に生きている。 れいむが自分の中にある新しい命に気づいたのは、すっきりから20日程たった後の事だった。 もう5日も、まりさに会っていない。 酷く身体が重いのだ。跳ねることもままならない。 まりさの待つ公園に行くことが出来なかった。 だが疑惑が確信に変わったからには、会わなくてはならないだろう。 お家の場所を教えてなかった自分が腹立たしい。 まりさならきっと、顔を見せない自分を心配して来てくれていたはずだ。 身重の身体に鞭を打ち、文字通り這うように巣を抜け出した。 危なかった。もう少し遅かったら、お家の入り口から出られなかったかも知れない。 れいむは身体を引きずりながら、まりさの待つ公園へと向かう。 途中、物珍しそうに自分を見つめる人間の視線を感じたが、そんなもの気にしてる暇はなかった。 一刻も早くまりさの所へ。今なら公園にいる時間のはずだ。 まりさ、おどろいてくれるかな? まりさ、よろこんでくれるかな? 足の裏が硬いコンクリートでボロボロになっているのが解る。 だが歩みを止めるわけにはいかない。 あかちゃん、ごめんね。 あかちゃん、ゆれるよね。 もうすこしだから、がんばってね。 公園まであと少しだ。 ゆっくりと入り口をくぐった。 公園の中にはいった。 まりさはどこだろう? まりさ。 よかった、いてくれた。 「ゆゆっ! どうしたんだぜ、れいむ!」 「ま、まりさ……」 「ちょっとまってるんだぜ。おみずをもってくるんだぜ」 まりさは噴水に行き口の中に水を含むと、すぐにれいむの側まで戻って来た。 そのまま、まりさのふっくらとした唇が、れいむのヒビ割れた唇に重なる。 口の中から冷たい水が、れいむの乾いた餡子中に広がっていく。 まるでまりさの優しさが、そのまま身体の中に入ってくるみたいだ。 れいむは、ごくごくとその水を飲み干した。 「あ、ありがとうね」 「きにするななんだぜ。でも、れいむはどうしてたんだぜ? まりさは、まいちにまってたんだぜ」 「うん、あのね」 れいむは話した。 自分に赤ちゃんが出来た事。 まりさとの赤ちゃんが出来た事を。 このおなかのなかにいるんだよ。 まりさとれいむのあかちゃんが。 赤ちゃんのいるお腹を見せ付けるように、ぐっと大きく伸びをする。 僅かに高くなった視線から、まりさの顔を覗き込む。 まりさは何だかひどく滑稽な表情をしていた。 やっぱり、まりさおどろいてるね。 すごくゆっくりしてないかおしてるよ。 これからその顔が喜びに溢れるのかと思うと、れいむはおかしくて堪らなかった。 思わずゆゆっと微笑むれいむ。 その目の前で、押し黙っていたまりさの唇が開いた。 「あかちゃんはいらないんだぜ。さっさとおろすんだぜ」 ──あれ? いまなんていったんだろう? 「そうだ、おにいさんにいって、いいいしゃをしょうかいしてもらうんだぜ」 えっ? 「せっかくだから、ひにんしゅじゅつもしてもらうんだぜ。すっきりしほうだいなんだぜ」 どうして? 「どうじで……?」 「だって、まりさはどくしんきぞくなんだぜ。あかちゃんなんてありえないんだぜ」 「どぼぢでぞんなごどいうのおぉおお!?」 信じられない。 ゆっくりしても理解できない。 赤ちゃんなのに! ゆっくりできるのに! まりさとれいむの、かわいいかわいい赤ちゃんなのに! れいむの口から、言葉にもならない声が吐き出される。 呪詛にも似たその奇声に脅え、公園に集まっていたハトの姿が消えた。 「ばびぶべぼぉおお! ばびぶべぼぉおおおお!!」 「うるさいれいむなんだぜ。なにいってるかわからないんだぜ。ちょっとはでかいくちをとじるんだぜ」 「ぞんな゛! ぞんな゛! ぞんな゛ごどい゛ばな゛いでぇええええ!!」 「わからないれいむなんだぜ。さっさとだまるんだぜ」 「わがらない゛のは、ま゛りざのほうでしょおおぉおおおお!?」 「やれやれなんだぜ。だまらないなら、まりさのめのまえからきえるんだぜ! にどとかおをみせてほしくないんだぜ!!」 まりさの身体が、れいむの身体を揺らす。 間違っても親愛のすりすりなどではない。 嫌悪に満ちた体当たりだ。 動かないれいむに、まりさが何度も何度も身体をぶつけてくる。 まりさ、ぜんぜん痛くないよ。 痛くないのに、すごく痛いよ。 わかった、わかったよ、まりさ。 だからもうやめてね。 ゆっくりやめてね。 赤ちゃんが嫌いなら、れいむがひとりで育てるね。 まりさがそう望むなら、そのとおりにするね。 でも、せめて。 「……あかちゃんがうまれたら、またあってくれるよね?」 「かんべんしてほしいんだぜ! のらのれいむとは、あそびだったんだぜ!」 ツバと一緒に言葉を吐き捨て、まりさは自分の家へと跳ね去った。 公園の向こうへまりさの姿が消えて行く。 もう追いかける気力もない。もう終わったのだ。 公園にはれいむの姿だけが、ぽつんと残された。 続く このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/120.html
ゆっくりの貴重な出産シーン 今、まさに出産を迎えようとしている母ゆっくりがいた。 一見すると通常のゆっくりまりさに見えるが、異様なのは顔一つ分の下膨れと、並外れた巨躯。 帽子を除いた高さだけでも人間の腰の高さを越え、妖精の背丈ほどにもなろうかというほど。 育ちきったゆっくりの姿だった。 ゆっくりを育て上げたのは、外敵に食われず、人に殺されず、餌にも飢えなかった環境と幸運。鈍重な体で、真のゆっくりを体現している。 このゆっくり程の巨躯となると、出産の方法も通常の若い固体とは異なっていた。 通常の母体が伸ばした蔓の先にみかん大の子供がわらわらと実る産み方では、小さく破けやすい上に自然界に生まれ落ちる同時に無力な捕食対象となってしまう。 だが、この大きさのゆっくりにまでなると蔓を伸ばすことも無く、その母体の内部で子を成体に近い大きさにまで育んでから出産を行う。 決して多くは産めないし、時間も要する方法だが、生まれる子ゆっくりはほとんど成体に近い体躯と知能を持つため、赤子と比べると高い生存率を誇っていた。 さらに生存率を飛躍的に高めていたのは、母体を痛めて直接生み出すことによる母性の形成だった。この出産方法を経た母ゆっくりには、生まれた子を自分の子だと強く認識させる深い母性が宿る。 出産の手順は、まずは顎の付近の皮を裂いて黒い穴が生じることから始まる。その穴をこじ開けて、めりめりと外へ吸いだされていく子ゆっくり。皮膚と内部をかき回されるような激痛にぶるぶると震えながら、本能を超える愛で歯をくいしばって耐える。 その命を削るような痛みと、自分で命を生み出す恍惚、そこにいたるまで自分の中で育つ命の愛おしさ。自然と人の親子のような母性を持つ母ゆっくり。 「ゆうううう、ゆううううー」 今、巨躯を振るわせるこのゆっくりも同じだった。今生まれようとしている我が子に、狂おしいほどの愛しさを感じている。 荒い息を吐き出し、ぶるん、ぶるんと発作のようにその巨躯が波打つ。 「ゆっゆっ!」 母ゆっくりが短い、ひきつったような声を上げ始めた。 目にはぽろぽろと滝のような涙。 出産の時が近い。 (ゆーゆー) 母ゆっくりの体内で安らかな呼吸をくり返す一匹のゆっくり。 そのゆっくりが意識をもったのはいつ頃だろう。 視界が体内の暗闇で塞がれているが、心に不安はまるでない。 まだ光を体験していなかったことと、あらゆる怖いものから自分を隠してくれるような暗がりに、絶対の安らぎを感じていた。 そんな至高のゆっくりの海に、その子ゆっくりは漂う。 いつだって心を穏やかにさせてくれる暖かさに包まれている。 母ゆっくりと言葉を交わせない寂しさもまるで感じなかった。 なぜなら、子ゆっくりは自分のすぐ隣でその温もりを分け合う、もう一匹の姉妹の存在に気づいていた。 その存在が姉か妹か、はっきりするのはもうしばらく後。 今はその時を二匹、ゆっくりと肌を合わせて待っている。 (お外はどんなところなんだろうね) 知能はあるが、知識のない子ゆっくりたち。 体をよせあって、あれこれと外の世界を想像するが、まったく予想もつかず、ただ期待と不安だけが膨らんでいた。 どきどきして、期待で身震いする子ゆっくり。 すると、ぴったり肌を寄せ合う姉妹に震えが伝わる。 (こわくても、ゆっくりしていってね! (こわくないよ! ゆっくりできているよ!) 姉妹の心配を呼び込まないよう子ゆっくりは元気に応じた。 微笑ましい母ゆっくりの体内の光景。 だが、それもまもなく終わりを迎えようとしている。 変化は突然始まった。 「ゆ゛!? ゆゆゆゆ゛っゆ゛っゆ゛っ!」 母ゆっくりの濁った悲鳴。 (ゆゆゆゆ!?) 続く振動がゆっくりたちを激しく揺らす。 熱い。 母体が興奮して熱を発していた。 途端にぎゅうと、ゆっくりたちの体にくわえられる圧力 「ゆうううう、ゆうううううー、ゆううううううーっ!」 長く、荒い息遣いで繰り返される母ゆっくりの呼吸。 その吸い上げる息にあわせて、肌を寄せ合っていた姉妹ゆっくりが離れていく。 (ゆっくりひっぱられていくよ!) 子ゆっくりは遠ざかる姉妹ゆっくりの声に、自分が妹となることを確信していた。 姉ゆっくりが生み出されれば、次はすぐに自分の番。 少しだけの不安と、たくさんのワクワクに子ゆっくりの心は躍った。 そうだ、お外に出るときは勢いよく飛び出そう。お母さんとお姉ちゃんを「元気にゆっくりしているよ!」と安心させてあげよう。 そうして、お母さんやお姉ちゃんにすりすりとほっぺをあわせて、ゆっくり幸せを味わおう。 「ゆ……ゆ゛っぎゅりいいい!」 びりびりと雷のような母ゆっくりの絶叫。 ついに出産がはじまる。 歯を食いしばる凄まじい表情の母ゆっくり。 その顎には真っ黒な空洞が生まれていた。 「ゆぎいい、ゆぎいいいいい!」 絶叫がこぼれるたび、その穴が押し広げられていく。 やがて、中からのぞいたのは、子であり、もうすぐ姉となるゆっくりまりさの瞳。 眩しそうに外の世界を見ている。 少しづつ、みちみちと押し出される子ゆっくり。 口元までが露出して、不思議そうに外を見る様子が伺えた。 「ゆ?」 一足早く母体から盛り上がり、外気に触れたゆっくりまりさの唇から困惑の呟きがもれる。 子ゆっくりの眺める世界は不思議に満ちていた。 今、生み出されようとしているこの空間は円筒状。さらに中央が大きくすり鉢上にへこんでいる。部屋の奥行きは母ゆっくりを6匹並べた程度。外の世界というのは、思ったよりも狭いらしい。 しかし、ゆっくりを本当に混乱させたのは、その円状の壁ぞいをみっちり埋め尽くす他のゆっくりたちの存在。みんな、母ゆっくりと同じ巨体で、壁から伸びた縄のようなものを口に深く咥えているのもおそろいだった。 「ゆ゛っ!」 母ゆっくりの鈍い悲鳴とともに、さらに外に押し出される子ゆっくり。完全に外に放たれるまであと一息だ。 だが、子ゆっくりにとって残念なことに、ゆっくりできるスペースがあまり多くはなさそう。 その室内で平坦なのは、円となって壁沿いに丸く並ぶ母ゆっくりたちがいるところだけ。後は中央へ向けて、落ち込むだけの漏斗状のスロープとなっていた。ゆっくりの丸い体では、転がり落ちるしかない斜面。 転がる先、部屋の中央には黒い小さな穴と、一本のそそり立つ柱。天井をも貫いて、空へ向かって一直線に伸びている。 あそこはゆっくりできるところなのかなと目を凝らしても、子ゆっくりの目には鮮明に映らない。すり鉢状のスロープは深く落ち込んで、影をつくりだしていた。 あんなとこより、お母さんのそばでゆっくりしたいなと素朴な希望を持つ子ゆっくり。だが、横目で見れば母ゆっくり自体がいる平坦な床もほとんどスペースがなく、母ゆっくりたちですら体は3分の1ほどははみ出している。今すぐにもスロープへ転がっていきそうな状況。 それを防いでいたのは、壁の縄だけだった。ぎゅうぎゅうに縛りつけられて、母ゆっくりたちは例外なく壁にはりつけられている。 なんで、母たちがそんなことをしているのか、子ゆっくりにはさっぱりわからない。 子ゆっくりに疑問が生じたそのときだった。 「ゆ゛っ!!!」 一際強い母ゆっくりの声。同時に、ぽんっという軽快な音とともに子ゆっくりは宙に飛び出していた。 堪えに堪えてから生み出されるため、大抵の子ゆっくりたちは勢いよく飛び出す。とはいえ、成体に近い体は衝撃を受けても大丈夫。ぴょんぴょんとはね回って、母ゆっくりに無事を報告する。 子ゆっくりもまた、元気よく空中で一回転する。その裏返った視界の中で、初めて母ゆっくりの顔をちらとみた。 凄まじい痛みの後だというのに、この上もないあふれた笑顔。 出産直後の母体の表情。それは母性に満ち溢れた、ゆっくりにとって最も幸せな表情を見せるという。 自分を生んでくれたお母さんが、そんな笑顔で迎えてくれた。子ゆっくりの顔も綻ぶ。ゆっくりまりさが生まれて初めてつくる表情は、笑顔。 幸福な光景だった。母まりさが蕩けそうな笑顔を消し、血走った瞳を見開くまでは。 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ!」 裂けるほどに口を開き、歯茎をむき出しにしての母ゆっくりの絶叫。いや、咆哮。 ぺたん。 びくりと怯えたままの子ゆっくりの体がスロープに落ちた。 「ゆ?」 そして、スロープと呼ぶには急勾配すぎるその坂道を一気に転がりだす。 ころころと、勢いがついて止まらない。 すさまじい勢いで回転する視界に、子ゆっくりは声もでなかった。 未だ続く母ゆっくりの絶叫を聞きながら、転がるままに部屋の中央にある黒い穴へと。 だが、穴には先客がいた。 きっと、この先客も同じように生み落とされた子ゆっくりなのだろう。 自分と変わらない大きさのゆっくりれいむが一匹、穴にはまりこんでいた。 穴の広さはちょうどゆっくり成体一匹分。 張り込む隙間も無く、ぼゆんと仲間の体に弾かれたゆっくりまりさ。 「ゆぐっ!」 スロープに再び叩きつけられ、息を吐き出す。だが、深い傾斜はゆっくりすることを許さず、再び穴の方へころころと転がり出す。加速していく体。勢い余り、穴に埋まったゆっくり霊夢の頭の上を通り過ぎる。 その先には、そそり立つ柱。 「ぶべ!」 穴に接するその柱にぶつかり、ユーモラスな悲鳴を上げる子ゆっくり。じんわり涙が浮かぶ。 だが、その衝撃のも係わらず、柱は微塵も揺るがなかった。ゆっくり二体分の太さで雄雄しくそそり立っている。仰向けに転がるゆっくりの視線の先には、青空を背景にゆっくりと回る風車の羽。 だが、生まれ出されるなり激痛を味わった子ゆっくりには風車どころではない。 い゛だい゛よううと、母の姿を求めて坂の上を見上げる子ゆっくり。 だが、同時にその傾斜の深さを思い知る。 下手に登ろうとしても、丸い体は転がり落ちてこの穴か柱にぶつかっていくだけ。 他に母の元へ登っていく手段も、どこにもみつからなかった。 坂道を前に途方に暮れて、ゆっくりと困り果てる。 「ゆ……ゆ……」 だが、体の下でうごめくゆっくりれいむに気づくと、本能が疼いた。まず、ゆっくりのとるべき行動は一つ。 「ゆっくりしていってね!」 初めて会った別種に向けて、本能に焼きついているご挨拶。 だけど、返答はない。 ぷうと、頬を膨らますゆっくりまりさ。もう一度ゆっくりを呼びかけようとした時だった。 よりかかっていた木製の柱が静かに回りだした。 「ゆっ!」 慌てて飛びのくまりさ。 「ゆゆっ!?」 足元のゆっくりれいむは穴にはまりこんで動けない。 「い゛や゛ああああ! ゆ゛っぐり゛でぎなああい!!!」 床を震わす絶叫の後「ゆ゛ぎぎぎぎぎぎ」と、ゆっくりがまず口にできないような呻きが床下のれいむから響き、すぐに鳴り止んだ。 訝しんで、様子を探るまりさの耳に、ぴいぴいと空気がもれるような音が聞こえた。 どうしたのだろうと覗き込む暇もなく、ふたたび柱が無慈悲な正確さで回りだす。 「びゃっ! びゃびゃびびび!!!」 再びの悲鳴は、言葉が破壊された意味のわからない泣き叫び。 その耳障りな音も、またすぐに鳴り止んで静まり返る空間。 「ゆ、ゆっくり?」 まりさが恐る恐る穴をのぞくと、れいむがひっくりかえってそこに沈んでいた。 声をだせないはずだ。 顎から下がなくなっていたのだから。ひっくり返った上半分の顔。かろうじて残った目が、だらだらと涙を額に向けて流し、のぞき込むまりさを見つめていた。 怖気だつまりさをさらに戦慄させたのは、見てしまった凶器。 れいむが削れて低くなった穴の中、柱に鈍くひかるらせん状の刃がついていた。アレが回るたび、中のゆっくりを下に押し込みながら、少しずつ輪切りにしていく。 そのまりさの想像を裏付けるかのように、再び回りだす柱。 「ゆっくりいいいい!」 まりさは震える。 とうとうすりつぶされ、穴の下の排出口からぼとぼととこぼれていく、かつてゆっくりれいむであったもの。それを間近で見せつけられていた。 柱の回転が止むと、何事もなかったかのように再びぽっかり空いた穴。 体を全身全霊の力でひしゃげて斜面にへばりつくまりさを待って、大きく口を開いている。 じんわりとまりさの額に浮かぶ汁。頬を伝い下へおちていき、やがてそれはこの上も無く残酷な潤滑油となるのだろう。でも、脳髄を震え上がらせる恐怖が、それを止めてくれない。死が猶予されているだけの状況。 そのことを、知能の発達したまりさは悲しいほどよく理解していた。 「い゛や゛あ゛! ゆ゛っぐり゛ざぜでてええ!!」 泣き叫ぶも、そこにいるのは自分一匹。 誰が落ちる危険をおかして自分を助けにきてくれるだろう。 いや、一匹だけいた。自分を無条件に愛し、守ってくれる存在が。 「だずげで、お゛があ゛ざああああああああん!!!」 声もつぶれんばかりの絶叫。 涙でかすむ目を、坂の上にいるお母さんに向ける。 だが。 「ゆ゛ぎいい、ゆ゛ぎいいいいい!」 母親もまた絶叫していた。 全身の水分を搾り出すような涙を流しながら、震えている。 その顎の下には、めきょっと開き始めた黒い穴。 子ゆっくりは、母の体内で一緒に外の世界を楽しみにしていた妹のことを思い出していた。 「でな゛い゛でええええ! ゆ゛っぐり゛じででえええええ」 母は生まれる子の運命がわかっていたのだろう。 それどころか、これまで沢山見てきたのだろう。自分と、壁に縛られた他の母が産んだ子の成れの果てを。見渡せば、他の母ゆっくりたちもわが子を生み落とさないよう、歯茎をむきだしにして泣き叫んでいた。先のゆっくりれいむは、そのうち一匹の子なのだろう。母ゆっくりれいむが一匹、笑ったような表情で白目をむいたまま、へにゃりと悶絶している。 「ぎいい、ぎぎぎぎぎ!」 自らの母ゆっくりもまた、すさましい歯軋りの音をたてていた。 今味わっているのは、子供が生まれ出る命をも削る苦痛。本来は、早く終わることを願って泣き叫ぶ痛み。 それでも、わが子の死を避けるため、その苦痛を一秒でも長引かせようと、母の思いが踏ん張らせていた。 だが、妹となるゆっくりにそれは伝わらない。 一刻でも早く、家族に囲まれた楽しく、どこまでもゆっくりできる希望の世界へ飛び出したい妹ゆっくり。 母ゆっくりの顔はすでに紅潮しきって、紅饅頭に。めこめこと、妹の顔が外へ吐き出されていく。 うっとりとした眼差しで外の世界を見ている妹ゆっくりは、この外の世界が異様だと気づけない。 「ゆ゛っ!!!」 ついに響いた短い悲鳴。 合わせて、きゅーっぽんっと、軽快な音をたてて妹ゆっくりが飛び出した。 瞬間、母親の顔に浮かぶ至福の顔。苦しみから解放されたどうしようもない本能が母ゆっくりを震わせていた。 「ゆっくりーっ!」 だが、姉よりも勢いよく飛び出した妹ゆっくりの高らかな声に、母ゆっくりの表情が消える。すぐさま、白目をむいた狂乱の表情。 「だめ゛えええええええ!」 母ゆっくりの悲鳴もむなしく、見事な放物線を描いて部屋の中央へ。 「ぶべら!」 そして、柱にぶちあたって垂直に落下する。 ごろごろと、そのまま穴へ。 「にげでえええええ、そこから逃げでええええええ!」 姉ゆっくりの真後ろで繰り広げられようとしている悲劇を、母の絶叫で知る。だが、姉ゆっくりはへばりついているのもギリギリで、助けることはおろか、振りかえることすらできなかった。 「う゛あ゛ああ! い゛だい゛よおおおお!」 柱に打ち付けた痛みにのたうちながら、妹ゆっくりが穴に落ちこんでいく。 その体が穴に完全に入り込むまさにその一瞬手前で、先に柱が回りだした。 「ぎぎぎぎぎぎぎぎ!」 姉ゆっくりは真後ろからの悲鳴に震えていた。妹が、生れ落ちるなりあのゆっくりれいむと同じ運命を歩んだことを確信する。 「びやああああああ!!! いだい、い゛だい゛いい! おがあざあああん!!!!」 だが、妹ゆっくりの絶叫とともに、床が振動する。続いて、べちゃりという湿った音。 妹ゆっくりは穴に完全に落ち込む前に柱の刃を受けたことで、下にしていたほっぺたを引きちぎられただけで脱出に成功していたのだ。 ただ、切ったほっぺたの傷は深く、広い。頬からは今もぼとぼとと命の元、餡子がたれ流れていた。それは生まれたての、ほかほか。 瑞々しい湿った餡子だったが、その分流れの勢いが強い。 おまけに状況がわからず、妹ゆっくりは完全にパニックを起こしている。もう、妹はだめだろう。姉ゆっくりは悲しさがこみあげていた。 「おがああざああああん! だずげでええええ!!!」 泣き叫ぶものの、母ゆっくりは壁に縛り付けられている。 「だれがあああああああ!!! ま゛り゛ざのごども゛だぢをだずげでえええええ!!!」 我が子に対して、目をひん剥いて、泣き叫ぶことしかしてやれなかった。 誰もかなえられない母の叫び。 取り囲む他の母ゆっくりたちも目を閉じるもの、歯を食いしばるもの、虚ろな笑いを浮かべるものと、様々な反応があるが、無力さでは同じこと。 我が子の元までいけるのは、我が子同様に産み落とされた無力な子供たちだけだった。 風車の動きに連動して回転する柱に押しつぶされるまでの短い命には、何もできない。 「お゛があぢゃあああん!」 えぐえぐと泣き叫ぶ妹のように自分も泣き叫びたい姉ゆっくり。だが、水気のある餡子でへばりつく妹と違って、強張ってきた体は声をだす振動だけで剥がれてしまいそうな状況。 何も言えず震えている。 「ゆ? おねえちゃん?」 それでも、妹がようやく姉の存在に気づく。 ずりずりという音。 下のほうから、妹が餡子を撒き散らしながら、その粘着力ではいずりあがってくる。 一瞬、それならばこのまま上にのぼれるのではないかと淡い期待が姉の胸をよぎるが、餡子が粘着力があるのは今だけ。後は乾ききって滑り落ちやすいパウダーとなる。無駄な期待だった。 「おねえちゃん、だずげでええええ!」 妹の哀れを誘う声。だが、わずかに早く生まれたからといって頼りすぎではないかと、こたえる気もおきない姉だった。 「ゆっ!?」 が、突然後ろ髪を引く力を感じて姉は叫んでいた。 ぐらりと後ろへ体重が移り、持ちこたえたものの全身から脂汁がにじみ出る。 「はふけてー!」 妹ゆっくりが、後ろから噛み付いていた。 少しでも上にいこうと、ぐいぐいと姉を引き寄せようとするが、姉にとってそれは死だ。 「だめ゛え゛え゛え! ゆ゛っぐり゛離じでねええええええ!!!」 振り放そうと必死で懇願し、振り放そうとする。 だが、後ろについた方がこの場合は絶対的な強者となる。 姉が頭を振り乱そうとした瞬間、それと同じ方向に妹ゆっくりのひっぱる力が加わる。 「ゆっ!?」 姉ゆっくりは、自分の体が地面を離れたのを感じていた。 このまま、母の元へ体が飛べばいいのに。 そんな夢想を、冷たく硬い床の感触が打ち壊した。 あとはもう、ごろごろと丸い体型のまま、加速度的に下へ。何が起こったのかかわらず、呆然となる妹の横を通り抜け、遮るものなく穴へ。 「ゆ!」 逆さに、頭からおちこんで、ようやくとまる。 だが、すぐさま凄まじい無慈悲な圧力が頭を襲ってきた。 「ゆぎぎぎぎぎぎ!」 餡子まみれで切れ味をまったくなくした刃が、なまくらなまま、風車の強大な力だけでゆっくりの頭を切断しようとしているのだ。 限界までひしゃげるゆっくりまりさの頭。だが、皮の強さを用意に上回る力が加わる。 ぶぢりと、ゆっくりまりさの頭に重い音が響いて、ゆっくりまりさは気が狂いそうな激痛とともに、重要な記憶と思考を失った。 どろどろと知能が芽生えた餡子を垂れ流し、ぼんやりとした頭が残される。 あれ、どうしたのかな。 「ゆー……ゆー……」 その言葉を口しようとして、発音の仕方をわすれて謎の歌をもらす姉ゆっくり。 気持ちを言葉にする機能が、完全に損なわれた。 いくつもの衝動が姉ゆっくりの胸に宿る。 ひどくいたくて、かなしい。おかしい。どうして。ちょっとまえまで、あんなにたのしみしていたのに。 ええと、なにをたのしみにしてたっけ? となりで、あたたかいたいおんをくれた、あのこはだれ? あたたかくて、おおきなあのゆっくりは、だれ? 「ゆー……ゆー?」 思いは言葉にならず、たれ流れるばかり。 それはかなしいことなんだと姉ゆっくりが思ったとき、さらなる圧力が襲ってきて、姉ゆっくりは短すぎる生涯を終えた。 死の責任の一端を担ってしまった妹ゆっくり。 だが、もはや姉の死を理解することができない有様だった。 流れ出る餡子がとまらず、意識が次第にぼんやりと朧になってゆく。もはや、こちらも転落は時間の問題だった。 何か、上の方にすごく頼れて、安心してゆっくりできる何かがいた気がする。 首を必死に持ち上げると、大きなゆっくりが坂の向こう側、はるか高みにいた。 自分の何倍もある大きな柔らかい体が、のたうちまわるようにひしゃげていた。 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」 悲鳴が響く。 だが、その視線はわが子ではなく、自分の周囲に向けられている。 身をよじらせて、イヤイヤをするような母ゆっくり。 「よ゛ら゛な゛い゛でええええええ!」 身震いしている母ゆっくりの周りをよく見れば、出産を終えたばかりの母ゆっくりの体にまとわりつく影。母ゆっくりの4分の1程度の大きさのゆっくりアリスが、見える数だけでも六匹はまとわりついていた。 「まっ、まりざっ! 大ぎぐでがわいい!!!」 ハアハアと、発情しきった目つきのゆっくりアリス。各々、母ゆっくりの傍で梳き放題に体を震わせ始める。 「はなれでよおおおお! にんっしんっ、じだぐないいいいい!」 壁に縛られながら、必死に少しだけ跳ね上がり、すさまじい振動とともに着地する。 「まっ、まりさっ!?」 まとわりついていた一匹がスロープへ転がり落ちていった。 「あ゛いが、い゛だいいいい! どがいは、なのにいいいいい!」 そのまま、穴に吸い込まれて的確に処理される。 妹ゆっくりは、改めて自分のなれの果ての姿を確認していた。 母ゆっくりはそのまま次のアリスも落とそうとするものの。 「まりざああ!!! 私のごども゛をうんでええええ!!!」 その空いた隙間にすぐさま別のアリスが入り込む。 すぐさま、すさまじい振動で母ゆっくり巨体をぶるぶると振るわせて動きを封じた。 「ゆゆゆゆっ!」 計七匹による、休みを置かない七色の輪姦に、たまらず声を上げ始める母ゆっくり。 その上気した顔は歯をくいしばり、必死にその時を耐えていたが、襲い掛かるアリスたちはついにその時を迎えていた。 「ま゛り゛ざあああ、もうずぐイグよおおお! まりざのあいをうげで、イグううううう!」 「ぐうううう! もう、産みだぐないのおおお、産みだぐないよおおおおおほほほおおおお!!!」 涙ながらの懇願も、興奮しきったアリスには通じない。 もうすでにアリスは最後の段階にいくことしか考えていないのだから。 「まりざっ、こんなにあいじでぐれで、うれじいいい! いぐうううう、うほほおおほほおおおお!!!」 「らっ、ら゛め゛えええええ! ごども、らめなのおおおお、んほほおおおおおおおおおおおおおおすっきりー!」 ゆっくりたちは同時に体を震わせ、果てた。 無事終了してしまった交尾。 死に掛けの妹ゆっくりの前で、恍惚の表情を浮かべてひっくりかえる。 母ゆっくりは白目をむいて、口からあぶくをふきあげてあいた。 「まりさあああ、こんてにゅーさせてあげるよおおお!」 その母ゆっくりの上に、なおも乗り上げてぺろぺろと全身を舐めるゆっくりアリスたち。もう次の交尾に移ろうとしている。 一方、子種を存分に届けてすっきりできたらしいゆっくりアリスが一匹。 「別にまりさだから産ませたいってわけじゃないわ、かんちがいしないでね!」 そんな台詞を残して、部屋の奥の小さな出入り口に向かっていく。 次の母ゆっくりが出産するまで、ありすたちはその向こうで待機しているのだった。 しかしまあ、そんなことはもう朽ち果てようとしている妹ゆっくりには興味のないことだった。 乾いてきた餡子が、さらさらと自分の体を下へ下へ押し流していく。 姉とゆっくりアリスが消えた穴まで、とどめるものは何も無い。 「ゆゆゆ……」 抵抗も無く、穴に収まる妹ゆっくり。 おかしいなと、妹ゆっくりは消えかかる意識で考えていた。 母ゆっくりにまとわりついたり、姉ゆっくりと野原をかけまわったり、疲れたら家族みんなでゆっくりと過ごす。 それだけできればゆっくりたちは幸せで、誰にでもいつでもできるはずのことなのに、なんで私たちは一度もそのゆっくりを味わえなかったのだろう。 柱が回る。 堪えがたい力が頭をしめあげる。 ぶりぶりと、切れたところから零れ落ちる餡子。 その無機質な圧力に妹ゆっくりは語りかける。 ゆっくりして…… ブチャリ。 意識を遮るくぐもった音とともに、ゆっくり姉妹の一生は終わっていた。 輪切りにされ、濾された餡子の行き先は真下に広がる大きな水がめ。 加工所の職員が定期的に集めれば、おいしい餡子のできあがり。 幻想郷の技術力で可能な限りに自動化された、ゆっくり生産工程の一つであった。 あとがき どうも、加工所の人です。 前回はみょんに関わるものを書くといっておきながら、創想話の方に夢中になって しばらく放置してしまい、申し訳ありません。 今回、手慣らしに出産型の繁殖の設定を使って気軽に一本書いてみました。 やはり、設定はおいしそうなものをつまみ食いするのが一番おいしいですね。 では、また。 by小山田